テニス肘(上腕骨外側上顆炎)の原因と治療・対処法

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)とは

テニス肘とは、スポーツや加齢、家事や仕事などの日常的な動作によって肘関節を酷使することで負担が蓄積し、炎症が起きて肘の外側が痛くなる病気です。特に曲げ伸ばしの動作によって、上腕骨(肩から肘にかけての骨)の外側上顆(がいそくじょうか)(肘の外側の部分)と筋肉(伸筋)とのつなぎ目の伸筋腱が引っ張られて傷つき、痛みが出現するのです。
軽症の場合は、安静時に痛みはありませんが、手を動かしたり、重い物を持ったりして手首に負担がかかると、肘の外側から前腕(肘から下の部分)にかけて痛みが出現するのが特徴です。
医学的には上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)と言い、厚生労働省による調査(平成29年度患者調査 傷病分類編)によると、テニス肘の総患者数は約19,000人にのぼると推定されています。
腕の筋肉を酷使しやすいテニスプレイヤーに多いことから、通称テニス肘と呼ばれています。しかし、全くスポーツをしない人でも仕事や日常生活で手首を繰り返し動かすことでテニス肘を発症することも珍しくありません。

このテニス肘によく似た肘のトラブルに、「ゴルフ肘」があります。ゴルフ肘は、肘の外側ではなく、内側が痛くなる病気で、テニス肘とは異なります。ゴルフ肘は医学的には上腕骨内側上顆炎(じょうわんこつないそくじょうかえん)と呼ばれます。
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テニス肘

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)の症状

テニス肘には特徴的な症状があります。テニス肘によくみられる症状のパターンについて解説します。

■安静時に症状はない

テニス肘の特徴は、安静時に痛みなどの症状を感じないことです。たいてい、腕を曲げ伸ばししたときや、重い物を持つなどして肘に負担がかかったときに痛みを感じます。また肘の外側のでっぱり(上腕骨外側上顆)を指で押したときに痛みを感じるのも特徴です。ただし、重症の場合、握力が低下したり、激しい痛みのためにコップが持てなくなったり、安静にしていてもジンジンとした痛みを感じるようになったりすることもあります。

■手首を反らすときに痛みが生じる

手首を反らす動作をしたときに痛みが生じるのもテニス肘によくみられる症状です。また、ドアノブを開ける、ペットボトルのキャップを閉めるなどのひねる動作も痛みのために困難になります。ただし、痛みの感じ方に関しては個人差があり、ある日突然痛みに襲われることもあれば、徐々に痛みが強くなることもあります。

■物を持ち上げるときにも痛みが生じる

物をつかんで持ち上げるような動作の時に痛みを感じるのもテニス肘の特徴です。特に、スーパーの荷物など物を持ち上げるなど、腕を伸ばした状態で物を持ち上げようとするときに強い痛みを感じます。

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)を放置するとどうなる?

軽症のテニス肘の場合、手首を反らす、手首をひねる、物を持ち上げる、などの動作をしなければ痛みの自覚症状は出ないため、そのまま放置してしまうことがあります。しかし、これらの動作は日常的によくおこなう動作のため、治療せずに放置していると、動作のたびに肘の伸筋腱を傷つけることになり症状を悪化させる危険があります。
テニス肘は重症化すると、安静にしていても肘にジンジンとした痛みが続くようになったり、握力が低下して物が持てなくなるなど、日常生活に支障をきたすようになります。

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)は自然治癒で治せる?

テニス肘は、比較的自然治癒しやすいと言われていますが、自然に治るかどうかは症状の程度や日常生活での負担の程度よっても異なります。

■軽症は自然治癒ができる

ごく軽症のテニス肘の場合は、時間の経過とともに、痛みなどの症状が徐々に治まっていくことが少なくありません。これまでの研究でも、発症から1年後には80%の人が自然に治ったという報告や、治療群と無治療群で1年後の症状に違いはなかったとう報告があることから、比較的自然に治りやすい病気だと考えられています。

■自然治癒はおすすめしない

軽症のテニス肘は肘に負担がかからないように安静を心がけて過ごせば、痛みなどの自覚症状がなくなることがほとんどです。しかし、一度傷ついたりもろくなった伸筋腱は、基本的に再生することはありません。日常生活や仕事を続ける中で、肘への負担をゼロにすることは不可能で、さらに症状を悪化させてしまう恐れもあります。テニス肘の症状があるまま無治療で放置していたり、悪化させてしまうと治りにくくなるため、自然治癒はおすすめしません。症状を感じたらできるだけ早期に医師の診断を受け、適切な治療を受けることが大切です。

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)の検査・診断

テニス肘の診断方法について解説します。
まずは問診をおこない、テニス肘が疑われる場合は、医師による痛みの誘発テストを実施し、さらに必要に応じてレントゲンやエコー、MRIなどの画像診断技術を用いて診断します。

■問診などによるチェック

まずは問診をおこない、普段の生活の中で症状が出る場面や動作、スポーツ習慣の有無、生活上での困りごとなどをチェックします。
その後、医師による肘の外側の痛みの誘発テストを、以下の3つの方法でおこないます。

・Thomsenテスト

Thomsenテスト(トムセンテスト:手関節伸展テスト)では、医師が手関節を曲げようとするのに対し、患者さまはそれに抵抗し肘を伸ばしたままキープするように手首手関節を伸ばしてもらい、痛みの反応を調べます。肘の外側に痛みが出ると陽性と判断します。

・Chairテスト

Chairテスト(チェアテスト)では、患者さまに肘を伸ばした状態で椅子を持ち上げてもらい、痛みの反応をみる検査です。肘の外側に痛みが出ると陽性と判断します。

・中指伸展テスト

中指伸展テストでは、患者さまが肘を伸ばした状態をキープしたまま、医師が中指を上から押さえます。患者さまには医師が加える負荷に抵抗して中指を伸ばしてもらい、痛みの反応を調べます。肘の外側に痛みが出ると陽性と判断します。

■レントゲンやエコー検査

問診と痛みの誘発テストの結果、他にも疑わしい疾患などがある場合には、それらと区別するためにレントゲンやエコー検査をおこなうことがあります。通常、テニス肘の場合はレントゲンでは異常がみられないため、異常を発見した場合は別の疾患が関係している可能性が考えられます。エコー検査では、テニス肘に特徴的な、伸筋腱の腫れや石灰化がないか調べます。

■必要に応じてMRI検査

レントゲンやエコー検査で診断が難しい場合は、必要に応じてMRI画像による検査をおこなうことがあります。MRI検査は伸筋腱の変性をみつけるのに役立ちます。また、テニス肘は伸筋腱の炎症だけでなく、関節を包んでいる滑膜(かつまく)ヒダという組織が関節内に挟まり込んで起こることもあります。MRI画像では、関節内の様子も明瞭にみることができるため、滑膜ヒダの異常を発見するのにも役立ちます。

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)の治療方法

テニス肘の治療方法には、保存療法、リハビリテーション、手術療法などがあり、患者さまの状態や重症度をみて最適な治療法を選択します。最近では、手術と従来の保存治療の中間に位置する治療として、PRP療法という新たな選択肢も加わっており、当院でも実施しています。それぞれの治療法について解説します。

■保存療法

症状が比較的軽い初期テニス肘に対しては、保存療法による治療が原則です。保存療法とは外用薬・内服薬・注射薬などによって炎症をとったり、痛みをコントロールする治療法のことです。まずは日常的な肘への負荷をなくし、手首やひじを動かさないようにして安静を保ち、痛みに対しては、内服の鎮痛消炎剤や湿布で治療します。特に痛みが強い場合はステロイド入り麻酔剤による局所ブロックで痛みと炎症をとることもあります。

■リハビリテーション

理学療法士によるリハビリテーションでは、ストレッチや筋トレ、運動訓練などを理学療法士と一緒におこないます。リハビリテーションに即効性はないものの、中・長期的に継続することで痛みなどの症状の改善に役立ちます。ストレッチでは、テニス肘によって硬くなりがちな前腕伸筋群(手首を反らせる筋肉)を柔軟にする訓練をおこない、筋肉の付着部(伸筋腱)の負担を軽減します。必要に応じて、テーピングやベルトなどの装具や電気療法、超音波療法などを併用することもあります。また、手術療法やPRP療法などと併用することで、治療の相乗効果が期待できます。

■手術療法

発症から半年〜1年以上経過しており、保存療法でも改善しない場合は手術療法を検討します。
主に手術療法では傷ついて劣化した腱の部分を切除し、骨と縫合して再建します。方法としては、肘の外側を5~8センチ切開しておこなうオープン手術と、小さな切り口から内視鏡を挿入しておこなう関節鏡下手術があります。

■PRP療法

PRP(Platelet-Rich Plasma:多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう))療法とは、再生医療を代表する治療法で、自身の血液からPRPを抽出し、患部に注入して治療します。PRPは新しい組織や細胞の成長を促す因子を豊富に含んでおり、人間が本来持つ自然治癒力を高めることで痛みや炎症の緩和に役立ちます。PRP療法は、著名なスポーツ選手がケガの治療にとり入れたことで、広く知られるようになり、現在ではテニス肘に対する保存療法と手術療法の間に位置する新しい治療法として近年注目されています。手術のように切る必要はなく、入院も不要のため、さまざまな事情で手術は避けたいという方に実施します。

なお当院は、第二種再生医療等提供計画取得済みの医療機関として、再生医療とリハビリテーションを組み合わせることで、再生医療の効果を最大限に引き出すことを目指します。

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)自力でできる対処法

テニス肘の症状が出ているときや、肘の外側に違和感を抱くときなど、自分でできる対処法を紹介します。

■運動前のストレッチ

運動や家事あるいは仕事で肘への負担がかかってしまうときは、あらかじめストレッチをおこない、腕に柔軟性を与え、筋肉の負荷を和らげることが大切です。ストレッチをする際は、肘関節だけでなく、肩から手の関節、指までの広い範囲を伸ばすようにしましょう。

■テニス肘用バンド

テニス肘用のバンドやサポーターを装着したり、テーピングをしたりすると、手から肘へと伝わる衝撃を吸収し、肘や手首の負担を軽減する効果が期待できます。テニス肘用バンドやサポーター、テーピングの巻き方については医師にご相談ください。

■冷やすまたは温める

テニス肘の痛みが出始めて日が浅い急性期には、患部周辺が熱を帯びていることがあります。熱を持って痛むときは、冷湿布を貼ったり、袋に入れた氷を患部にあてるなどして冷やすと痛みが和らぎます。ただし、痛みが数カ月に及ぶなど、慢性的に続いている場合は、冷やすと逆効果になります。お風呂で温めたり、サポーターや長袖の衣服で患部を冷やさないようにした方が痛みが軽くなることがあります。

監修医師紹介

監修医師紹介

西新宿整形外科クリニック 川原 昭久 院長 Akihisa Kawahara

  • 【所属学会】
    日本整形外科学会
  • 【資格】
    日本専門医機講認定 整形外科専門医
  • 【学会発表実績(筆頭演者として)】
    神奈川整形災害外科研究会