軟部腫瘍
頻度
軟部腫瘍とは四肢や胴体にできるはれものやできもののことをいいます。
非腫瘍性の腫瘤として、ガングリオン、類表皮嚢胞(粉瘤)、滑液包炎がよく見受けられ、腫瘍性の腫瘤は脂肪腫、血管腫などが見受けられますがどちらも良性の疾患となっています。
原因と病態
■ガングリオン
ガングリオンとは手の甲に発生する小指ほどの大きさの硬い腫瘤です。
ガングリオンの内部にはゼリー状の液体が充満しています。
■類表皮嚢胞
類表皮嚢胞とは新陳代謝やターンオーバーなどから起こる古い角質や垢などの老廃物が皮膚下に溜まってしまう嚢胞性病変です。感染した場合傷が直りにくいのが特徴です。
■滑液包炎
滑液包炎とは膝関節、肘関節の後方にできる腫瘤で動かした際に若干の疼痛が生じます。超音波検査で液体を確認することができ、主な原因としては滑液包に液体が溜まることで発症します。
■脂肪腫
脂肪腫は皮膚下にできる腫瘍と筋肉内にできる腫瘍があり、皮膚下にできる腫瘍がほとんどです。大きくなることもあり、その際は高分化脂肪肉腫(低悪性)の可能性もある為区別が必要になります。
■疼痛のある腫瘍
疼痛が生じる腫瘍は血管系、もしくは神経系の良性腫瘍になります。
■皮下にできる腫瘤
皮下にできる腫瘤の中でも硬く3cm以上のものは注意が必要とされ針生検によって検査します。針生検後には出血する場合があり、20分間は安静にしなければなりません。悪性の場合は広がる恐れがあります。
■軟部腫瘍
軟部腫瘍は悪性であっても痛みが生じることがない為放置する方が多く、肥大化していることが多いです。
軟部にできる腫瘍は悪性であっても痛みがない為注意が必要となります。
■高悪性軟部腫瘍
経過が長いものの中でも高悪性軟部腫瘍があります。
疼痛が生じる場合は血管系・神経系腫瘍の良性腫瘍なのですが、感染症(潰瘍)に類似する隆起性皮膚線維肉腫、横紋筋肉腫、類上皮肉腫などは悪性腫瘍に分類される為注意が必要です。
診断
臨床所見、CT検査やMRI検査などの画像所見、組織所見の3所見をあわせて診断を行います。
脂肪系腫瘍ではCT検査やMRI検査を行います。脂肪抑制の造影MRI検査で、染まれば高分化脂肪肉腫が考えられます。MRI検査ではガングリオン、粘液性腫瘍、類表皮嚢胞などは比較的容易に解ります。定型的な画像でない腫瘍には粘液性悪性腫瘍(粘液性脂肪肉腫、粘液性線維肉腫など)が多く見られます。
■組織所見
定型的なもの以外は生検を行います。針生検は、局所麻酔で神経や血管を傷つけないよう注意し、14ゲージの穿刺針で組織を採取を行いますが、深い部分では超音波やCTガイド下で針と腫瘍の位置を確認しながら採取をします。局所麻酔で激しい疼痛がみられれば中止し、神経の腫瘍が考えられます。
採取した部分が壊死のこともあり、診断がはっきりしなければ、手術で腫瘍を露出して1×1×1cmほどの組織を採取する切開生検を行います。
治療
良性の境界明瞭な皮下腫瘍であっても、手術室で止血帯を用いて、神経を損傷しないよう行っています。切除に時間がかかる大きな腫瘍の場合は入院して治療を行います。
悪性の腫瘍は、全身麻酔や腰椎麻酔をかけ、腫瘍の辺縁より3cm以上離して筋肉や神経・血管を含めて、ときに腫瘍が接している骨や関節も切除します。そのままにしておくと術後筋力低下、神経障害、血管障害が出現します。
欠損部を補うため骨移植、人工関節置換術、神経移植,血管移植、筋・皮弁移植などの組織移植が行われます。
悪性度の高い腫瘍は術前に抗腫瘍剤を投与して、腫瘍を小さくしてから手術を行います。
また、術前に抗腫瘍剤(抗がん剤)が有効であれば術後も追加を行います。この抗がん剤治療を行うことで結果は大きく変わってきています。
来院時にすでに肺転移がみられる場合は腫瘍および肺転移がほとんど消失するまで化学療法を繰り返してから、広範切除を行います。
患者様の希望で、可動性のある腫瘍や隆起性の腫瘍は誤って切除されてしまい後で問題になることがあります。病理診断で、紡錘形腫瘍などの結果がでた場合はすぐに専門家に紹介してもらわなければなりません。
切除後に悪性が疑われた場合は決して再発するまで待ってはいけません。初回の手術創の周りを大きく切除する追加切除が必要になります。症例によっては追加切除の前に化学療法や放射線療法も必要になります。再発を待たず治療すれば術後の結果に大きな差はないとされています。
軟部腫瘍について医師が解説
骨、軟骨、内臓を除いた筋肉、脂肪、血管といった柔らかい組織から発生した腫瘍の総称であり、比較的手足に発生する場合が多く、良性が70%, 悪性が30%と圧倒的に良性が多いようです。