むち打ち症の原因と治療・対処法

むち打ち症

むち打ち症とは、自動車事故やスポーツ時の転倒の衝撃で、首が鞭(むち)のようにしなり、不自然な力が加わることで、首や全身にさまざまな症状が発生している状態のことです。むち打ち症の症状は、頸部周辺の局所にあらわれることもあれば、全身にあらわれることもあります。また、受傷した原因や、けがの程度によって、むち打ち症の症状の強さにも個人差があります。ここでは、むち打ち症の症状や原因、検査方法、治療法などについて詳しく解説します。

むち打ち症

衝撃の瞬間、胴体は前方へ押し出され、首は後方へしなります。反動で急激に首が前にしなります。

むち打ち症とは

実はむち打ち症という用語は、頸(くび)に衝撃を受けたことによってさまざまな症状が発生している状態を表す通称であり、医学用語ではありません。一口にむち打ち症と言っても、衝撃によって損傷を受けた組織の違いにより、主に4つの型に分類されています。

1. 頸椎捻挫型(けいついねんざがた)
最も多いケースで、頭を支える頸椎周辺の靭帯や筋肉を損傷している。

2. 神経根損傷型(しんけいこんそんしょうがた)
頸椎から腕へと伸びる神経の根元を損傷している。

3. 脊髄症状型(せきずいしょうじょうがた)
脊髄やそこから伸びている神経まで損傷が及んでいる。

4. バレー・リュー症候群型
自律神経まで損傷している。

むち打ちの症状

むち打ち症の典型的な症状は以下の通りです。むち打ち症の症状の多くは、受傷直後ではなく、受傷から数時間後や翌日以降に遅れて出てきます。まれに受傷後数ヵ月、数年たっても症状がのこることがあります。

頸椎捻挫型
頭痛、首や肩の痛み、首の動かしにくさ(左右前後に動かせない)

神経根損傷型
首の痛み、肩から腕にかけてのしびれや痛み、感覚障害、力が入らない(脱力)

脊髄損傷型
腕や脚の痛みやしびれ

バレー・リュー症候群型
頭痛、めまい、ふらつき、耳鳴り、倦怠感など

むち打ち症の原因

むち打ち症の原因として特に多いのは自動車事故による頭頸部への衝撃です。自動車乗車中に衝突すると、乗っている人に大きなエネルギーが加わります。この時、胴体部分はシートベルトにより座席に固定されていますが、首から上は、事故の衝撃で前後左右に大きく揺さぶられます。すると、頭を支えている頸部に強い力が加わり、首がむちのように大きくしなることで、首周辺の靭帯や神経などの組織を傷つけてしまうのです。
またむち打ち症は、コンタクトスポーツの衝撃、スノーボードなどの転倒の衝撃で頭を強く打った時などでも起こります。

病院での検査方法

病院では診察および各種検査によってむち打ちの状態を調べます。ここで重要なのは、損傷部を可視化する画像診断による検査です。むち打ち症に対して用いられることの多い検査について解説します。

レントゲン
骨の異常を見つけるための検査です。X線を使って患部を撮影します。受傷時の衝撃によって、骨が損傷を受け、骨折や脱臼がある恐れのある場合に実施します。

MRI
骨の他に、靭帯や神経などX線では観察できない柔らかい組織の異常を見つけるための検査です。磁石と電波を使って患部を撮影します。手のしびれなどの神経症状が強い場合や、症状が長引いている場合などに実施します。

CT
レントゲンと同じくX線を使った検査ですが、レントゲンよりもさらに詳細な観察ができ、小さな骨折や脱臼を立体的に捉えることができます。特に大きな衝撃を受けた事故の場合、脳や脊髄などのより深層部の組織に損傷がないか確かめるために用いることもあります。

むち打ち症の治療方法

基本的には自然経過で治癒します。
急性期の数日間は、首の奥深くの筋肉や靭帯に強い炎症が起きており、損傷した部位を守るために硬直して動きにくくなることがあります。この時に無理に力を加えると、さらに患部を痛めてしまいます。そこで急性期の初期治療としては、内服治療や湿布で炎症を抑えつつ、頸椎カラーで患部を固定し、安静を心がけます。
急性期の疼痛(とうつう)が軽減した後は、硬くなった筋肉や低下した運動機能を元に戻すために、安静にしすぎないことが大切です。疼痛範囲内での頸椎を動かすリハビリテーションをおすすめします。

むち打ち症を長引かせないためにやってはいけないこと

頸にけがをした後、自己判断で病院へいくのをがまんしたり、放置したりすることは、後遺症を残し、むち打ち症を長引かせる原因になるのでやめましょう。きちんと病院で初期治療を受け、頸椎カラーで損傷した部位を保護したり、痛みなどがある時期は痛み止めなどをしっかり飲んで症状をコントロールすることが大切です。ただし、ある程度痛みが軽減したにも関わらず、頸椎カラーを長期間使用し続けると、拘縮(こうしゅく)や筋委縮の原因になり、かえって痛みが増したり、頸の動きが悪くなったりして早期の社会復帰ができなくなるのでやめましょう。

むち打ち症に関するよくある質問

むち打ち症に関して、患者さまが気になる質問についてお答えいたします。

Qむち打ち症はどのくらいで治りますか?

A

受傷した原因やけがの大きさにもよりますが、ごく軽いむち打ち症であれば約1週間で治ることもあります。多くの場合、1か月以内に治りますが、ひどい場合は、2~3ヶ月痛みが取れないことや痛みが取れた後も、半年以上しびれやめまいなどの症状に悩まされることもあります。

Qむち打ち症はどのくらいで症状が出ますか?

A

むち打ち症の症状は、受傷直後ではなく、数時間~翌日、あるいは数日たってからあらわれることが少なくありません。ケガをした瞬間やその直後は興奮状態にあり、痛みを感じにくいのですが、時間の経過とともに、首の不調や痛みが顕著になり、むち打ち症と診断されることもあります。

Qむち打ち症はどのような症状が出ますか?

A

むち打ち症では、首や肩の筋肉や靭帯の損傷による、首や肩の痛みや動かしにくさといった症状だけでなく、首の神経を損傷した場合には、吐き気やめまい、耳鳴り、しびれや脱力感などの神経症状が出ることもあります。

むち打ち症の治療法は?

川原 昭久 院長
川原 昭久 院長
基本的には自然経過で治癒します。
急性期の数日間は内服・湿布、頸椎カラーを使用。急性期の疼痛が軽減した後は疼痛範囲内での頸椎の運動をおすすめします。

むち打ち症を長引かせないために

頸椎カラーを長期間使用すると、拘縮や筋委縮の原因になり、早期社会復帰できなくなるのでやめましょう。
川原 昭久 院長
川原 昭久 院長

監修医師紹介

監修医師紹介

西新宿整形外科クリニック 川原 昭久 院長 Akihisa Kawahara

  • 【所属学会】
    日本整形外科学会
  • 【資格】
    日本専門医機講認定 整形外科専門医
  • 【学会発表実績(筆頭演者として)】
    神奈川整形災害外科研究会