脊椎椎体骨折

脊椎椎体骨折

転移性骨腫瘍による病的椎体骨折、強い外力により生じる外傷性椎体骨折、比較的弱い外力によっても生じる骨粗鬆症によるものもあり、圧迫骨折とよばれることもあります。
ご高齢の方に起こるものは、胸椎と腰椎の移行部あたりの椎体に生じ、ほとんどが骨粗鬆症に起因しているので、転んだりした軽微な外力により生じます。

症状

骨粗鬆症により骨の弱くなっている場合に生じるものでは、胸腰移行部に生じることが多く疼痛が軽度の場合もあります。しかし、尻もちなどで明らかに外力が加わったものでは、通常ですと骨折のある部位の疼痛を伴います。いくつもの場所に多発性に椎体骨折が生じると背中が丸くなり身長が低くなります。

腫瘍などの転移によるものは、骨折部の体動時の痛みのほかに安静時にも痛みが生じます。強い外力により生じた場合は、他の骨軟部損傷を伴うことも多く、脊髄損傷を生じる場合もあります。部位によりますが胸腰移行部に生じた場合、重症では両下肢麻痺を生じる可能性もありさまざまな症状が現れます。

原因と病態

骨粗鬆症が原因で生じるものは、中腰や重いものを持つなど胸腰移行部に力が集中して骨折することがあります。
外力でも力が集中したところの椎体の前方がつぶれくさび形になります。

腫瘍などの転移による場合、腫瘍が転移した部が弱くなって弱い外力で骨折します。強い外力により生じた場合は、椎体前方だけで済む場合もありますが、脊椎椎体が後方要素を含め、全体につぶれて不安定になり、脊髄の通り道である脊柱管に及び、脊髄の麻痺を生じることがあります。これを脊髄損傷と言います。

診断

レントゲン検査を行うことで診断がつきます。椎体骨折部の粉砕や脊髄損傷のある際には、CT検査やMRI検査が必要になります。
骨粗鬆症が疑われる場合は骨密度を測定します。
転移性骨腫瘍が疑われる場合は、MRI検査や骨シンチグラフィー等の検査を追加で行います。

予防と治療

骨粗鬆症による軽度の圧迫骨折の場合は、簡易コルセットなどで外固定をして、前屈を禁止して安静にします。
安静にすることで3~4週ほどでほとんどが治ります。

強い外力によるものでは、ギプスや装具などの外固定で早期に離床して歩行訓練を行います。圧迫骨折が高度であったり、骨折部の不安定性強かったり、脊柱管がすれたり骨片で圧迫を受けていたりしている場合や、長く疼痛が残るものには、手術が必要になることがあります。

脊椎椎体骨折について医師が解説

治療の基本は保存治療です。
受傷後1か月の間、骨折部は不安定で容易に変形しますので特に注意が必要です。硬めのコルセットを使用し、骨折の程度によってはギプスを身体に巻いたりします。これによって、痛みを軽くし、変形の進行をできるだけ防ぎます。それでも痛みは骨折が治る頃まで続きますので、寝たり起きたりの回数はあまり多くしない方がよいと思われます。また、畳の上よりむしろ立ち上がりやすいベッドでの生活を勧めています。早い人でも受傷後2週から、多くの人では3~4週から骨が形成されてきます。
脊椎椎体骨折の背景に骨粗鬆症が隠れていることがあり、ホルモンバランスが崩れる閉経後の女性に特に多いですので、骨密度検査をお勧めします。骨粗鬆症は、他にも年齢や運動・喫煙などの生活習慣に関わりがあります。

監修医師紹介

監修医師紹介

西新宿整形外科クリニック 沼倉 裕堅 院長 Hirokata Numakura

  • 【所属学会】
    日本整形外科学会
    日本再生医療学会
    日本四肢再建・創外固定学会