膝に痛みと変形が起こる「変形性膝関節症」

立ち上がったとたんに膝が痛い、歩き始めると膝の痛みを覚える。こうした痛みを感じた場合、変形性膝関節症が疑われます。

初期では動作を開始したときに痛みを感じますが、休めば痛みがとれます。ところが、病気が進行してくると、正座や階段の昇り降りができなくなり(中期)、さらに悪化すると安静にしていても痛みがとれません(末期)。末期になると、膝の変形も目立ち、膝をピンと伸ばすことができなくなります。また、歩くことも困難になり、日常生活がとても不自由になります(図1)

変形性膝関節症では、膝の痛みのほか、膝の曲げ伸ばしが難しくなる(可動域が狭くなる)、水がたまる、といった症状も特徴です。

関節軟骨がすり減リ、炎症が起こる

変形性膝関節症の特徴は、年齢を重ねるにつれて、膝の関節軟骨が弾力性を失い、すり減っていることです。膝の関節軟骨は、厚さ3~4mmのスポンジのような組織で、骨どうしが直接ぶつからないようにクッションの役割をしています。

クッションである関節軟骨がすり減って、骨どうしの摩擦が大きくなると、関節軟骨が削り取られ、そのかけらの刺激によって炎症が起こります。関節軟骨には神経がないので、関節軟骨自体が痛みを発するのではなく、炎症が痛みの原因となります。関節に水がたまるのも、炎症が原因です。このほか、変形性膝関節症の発症には、肥満、遺伝、外傷なども関係していると考えられています。

また、O脚あるいはX脚があると、膝の変形が進みやすいとされています。まっすぐに立ったときに、両脚の隙間がアルファベットの「O」に見えるものをO脚(外股)、両脚の隙間がアルファベットの「X」に見えるものをX脚(内股)といいます。O脚の場合、膝関節の内側に体重の負担がかかるため、内側の関節軟骨がすり減りやすくなります。逆にX脚の場合、膝関節の外側に体重の負担がかかるため、外側の関節軟骨がすり減りやすくなります(図2)。

骨や軟骨は、常に古いものが壊され、新しいものがつくられています。これを骨代謝、軟骨代謝といいます。変形性膝関節症になると、膝の軟骨代謝のバランスが崩れ、関節軟骨が変性し、最終的には破壊されます。

患者数は2,500万人以上、4:1で女性に多い

日本では、40歳以上の変形性膝関節症の患者は約2,530万人いて、そのうち痛みを伴う患者が約800万人いると推計されています。年齢とともに患者の割合が増えていきます。また、4:1の割合で、女性の患者が多いのも特徴です。女性では60歳以上で60%弱、80歳以上では約80%の人が変形性膝関節症であると考えられています2)。

1)日本整形外科学会, 整形外科シリーズ 3 変形性膝関節症(患者向けパンフレット)
2)Yoshimura N, et al. J Bone Miner Metab. 2009; 27(5): 620-8