しびれの主な症状と治療方法について

しびれ

しびれには、長時間正座をした時のように触っても何も感じない、あるいは逆にピリピリして触れられると痛みを感じるなど感覚の異常が起こるしびれと、手足に力が入らない、うまく動かせないなど運動機能の麻痺が起こるしびれの二通りがあります。

手足に起こるしびれの多くは、手や足にある末端の神経と脳を結ぶ経路のどこかに障害が起こるために起こります。しかし、しびれの背後には重い病気が隠されていることもあるため、症状に応じた対処が必要です。しびれが起こる原因を正しく理解して、適切な診療科目を受診しましょう。

しびれの原因として考えられる病気

しびれの原因には、脳や脳周辺の病気、大きな神経の経路である脊髄に起こる障害、手や足など末梢の神経に起こる障害などがあります。こうしたしびれの背後にある病気には、脳卒中や脳腫瘍、頸椎や脊椎のずれとヘルニア、糖尿病やアルコールの多飲による末梢神経の損傷などが考えられます。

脳の病気が原因のしびれ

しびれを起こす病気には糖尿病などの内科的疾患もありますが、しびれを引き起こす直接の原因となるのは主に脳の病気です。しびれの原因となる代表的な脳の病気には脳腫瘍や脳卒中があり、脳の血管が詰まる脳梗塞と頭蓋内での出血を合わせて脳卒中と呼んでいます。

■ 脳梗塞(のうこうそく)・脳出血などの脳卒中

脳卒中には、血栓などで脳の血管が詰まる脳梗塞、脳内の血管が破れて出血する脳出血、脳の外側で出血が起こるくも膜下出血、脳梗塞の症状が現れて短時間で収まる一過性脳虚血発作の4タイプがあります。脳卒中では手足のしびれだけでなく次のような症状をともないますが、いずれも突然起こることと身体の半身に起こりやすいことが特徴です。
  • 激しい頭痛、吐き気
  • ろれつが回らない、うまくしゃべれない、言葉が出てこない
  • 片目が見えないか見えにくい、ものが二重に見える
  • うまく歩けない、ふらつく
  • 人の言うことが理解できない
このような症状が突然現れた場合は脳卒中を疑い、すぐに119番で救急車を呼んでください。

■ 脳腫瘍(のうしゅよう)

脳腫瘍の症状は、身体や顔の半身に起こる麻痺やしびれ、歩けない・ふらつく、ろれつが回らない、言葉が出ない、人の言うことが理解できない、ものが二重に見えるなど、脳卒中と似た症状が現れます。ただし、脳卒中ではこれらの症状が突然現れるのに対し、脳腫瘍ではいつの間にか現れ、腫瘍が大きくなるにつれて症状も徐々に強くなっていくのが特徴です。

また、脳腫瘍でも頭痛が起こりますが、脳卒中のように突然激しい頭痛に襲われるのではなく、朝起きたときに起こりやすくなるのが特徴です。脳腫瘍でもしびれだけでなく他の症状が複合して現れるので、気になる症状がある場合は早急に脳神経外科を受診してください。

脊椎(せきつい)が原因のしびれ

背骨は脊柱、脊椎とも呼ばれ、首から骨盤までを椎骨(ついこつ)という小さな骨が連なる構造をしています。脊椎のなかには神経の束である脊髄が通っており、脊椎の異常や損傷によって脊髄が圧迫されることで痛みやしびれを起こします。脊椎が原因で起こるしびれには、脊椎の首の部分で起こる頚椎症(けいついしょう)と、腰部の腰椎で起こる腰椎分離症、首と腰のどちらにも起こる椎間板ヘルニアなどがあります。

■ 頚椎症

脊椎を構成する椎骨の上から7番目までを頸椎と呼び、この部分に起こる症状を総称して頚椎症と呼びます。椎骨と椎骨のあいだにはクッションの役割を果たす椎間板がありますが、老化によって変形したりつぶれたりすることで脊髄や神経を圧迫し、痛みやしびれが生じます。

椎間板がつぶれて脊髄を圧迫する頚椎症性脊髄症(けいついしょうせい せきずいしょう)と、椎骨が変形して起こる頚椎症神経根症(けいついしょうせい しんけいこんしょう)を合わせて頚椎症と呼びます。症状としては手足や首、肩、手指のしびれと痛み、脱力感、筋肉の衰えなどが起こります。

■ 頸椎・腰椎椎間板ヘルニア

椎骨間のクッションである椎間板が変形して飛び出している状態をヘルニアと呼びますが、ヘルニアの部分が神経根を圧迫して手足に痛みやしびれなどの症状が現れると椎間板ヘルニアと診断されます。腰椎椎間板ヘルニアでは足の痛みやしびれのほかに、腰痛、お尻の痛みをともないます。腰椎椎間板ヘルニアの詳細は以下のページをご参照ください。

■ 腰椎分離症・分離すべり症

腰椎分離症とは腰の部分の椎骨に亀裂が入った状態で、主に成長期のスポーツ中に起こります。腰痛やお尻、太ももなどに痛みが出ますが、安静にしていると症状がないため高齢になるまで気がつかないこともあります。腰椎分離症に気づかず年齢を重ねるうちに、椎骨同士が離れ離れになってしまう分離すべり症へと進行し、腰痛や脚の痛み、しびれなどの症状を引き起こします。

神経(末梢神経)が原因のしびれ

脳の病気や脊椎の障害以外にも、内科的な病気やホルモンバランスの異常でしびれが起こることもあります。代表的な病気に糖尿病などの代謝異常があり、病気ではありませんが、女性における妊娠出産期や更年期に起こりやすいしびれ症状もあります。

■ 糖尿病性神経障害

糖尿病は食事由来のグルコース(ブドウ糖)が回収されず、血液中に大量に糖が存在する状態になる病気です。糖は非常に酸化されやすいため、血管や神経の細胞がダメージを受けやすくなります。そのため、糖尿病が進行すると末梢血管の劣化や神経障害が起こります。

糖尿病性神経障害では、しびれや痛みとともに足がつりやすい、つま先の冷え、感覚麻痺などが起こり、進行すると手足が壊死するなど重い症状に至ることがあります。

■ 手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)

手根管症候群とは、指先の感覚を支配する神経が手首の部分で圧迫されてしびれや痛みが生じる病気です。肩から腕、手首を通って親指、人差し指、中指と薬指の半分までの感覚を支配している太い神経を正中神経(せいちゅうしんけい)と呼びますが、手首にある靭帯が厚くなって正中神経を圧迫することで、小指以外の手指にしびれや痛みなどの症状を引き起こします。

手根管症候群はケガや骨折が原因でも起こりますが、症例の多数を占める原因不明の突発性手根管症候群は、妊娠出産期や更年期の女性に多く見られます。女性ホルモンの乱れによって靭帯が厚くなり正中神経を圧迫することで起こると考えられています。

■ 女性のしびれは更年期によるものの可能性も

手根管症候群のほかにも、女性ホルモンが関係していると思われるしびれの症状は少なくありません。女性ホルモンのバランスが崩れやすい更年期や妊娠出産期の女性には、以下の症状や病気が多いといわれています。
  • へバーデン結節、ブシャール結節 手指の関節にコブのような結節ができて腫れや痛み、しびれなどが起こります。第一関節にできる結節をヘバーデン結節、第二関節にできる結節をブシャール結節といいます。
  • 母指CM関節症 ビン詰めのふたを開ける時のように親指(母指)に力を入れる動作で、親指の付け根にあるCM関節に痛みが起こります。進行するとCM関節の部分がふくらんできて変形することもあります。
  • ばね指 指の根元から指先に向かって、指の曲げ伸ばしをするための「腱」が伸びており、「腱鞘(けんしょう)」が腱を支えています。腱や腱鞘が炎症を起こすことで痛みが生じ、指を曲げにくくなる「指の腱鞘炎」のことをばね指と呼びます。
  • ドケルバン病 ドケルバン病は親指側の手首に起こる腱鞘炎で、狭窄性腱鞘炎(きょうさくせいけんしょうえん)とも呼ばれます。手首から親指に向けて伸びる腱は、親指を伸ばしたり曲げたりする度に腱鞘のなかを前後に移動します。このときに腱と腱鞘がこすれて炎症を起こし、痛みが生じます。
これらの病気は女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が減少することで起こりやすくなります。そのため、更年期以降の女性にはしびれの症状が多く現れるようになります。

■ アルコール依存症

アルコール依存症の方にもしびれの症状が多くみられます。お酒に含まれるアルコールは肝臓で分解されて強毒性のアセトアルデヒドに代謝されますが、このアセトアルデヒドとアルコールが血液中を循環して神経細胞を傷つけることでしびれが起こります。また、アルコールの代謝に大量のビタミンB1が消費され、ビタミンB1欠乏症=脚気の症状が現れて手足のしびれを引き起こします。

しびれが出たときに受診すべき診療科

しびれの症状を自覚したとき、まず受診を考えるべきは整形外科ですが、しびれ以外の症状がある場合は慎重な判断を要します。しびれと同時に視覚や言語の異常、頭痛、吐き気、からだの半身に症状があるなど、脳の病気が疑われる場合は迷わず救急外来を受診してください。

しびれは脊椎や腱に起こる傷害や炎症だけでなく、悪い姿勢を長く続けるなど血行不良や筋肉のこりなどで起こる場合もあります。このような状態が長く続くことで脊椎や神経の病気へと進行してしまう恐れがあるため、なるべく早い段階で整形外科を受診することをおすすめします。

しびれについて医師が解説

しびれは糖尿病や脊髄症など、他の感覚異常をきたす疾患や病態もあり鑑別が必要です。治療が必要なものや心配のないものがあるので、心配な場合は自己判断せず受診してください。

監修医師紹介

監修医師紹介

西新宿整形外科クリニック 沼倉 裕堅 院長 Hirokata Numakura

  • 【所属学会】
    日本整形外科学会
    日本再生医療学会
    日本四肢再建・創外固定学会