身長でお悩みのご両親とお子様へ
身長はその人の個性です。身長が高い、低いでその人の評価が決まるものではありません。
ですが、私はこれまでに、身長が伸びた結果、自信を持ち、気持ちまで前向きになったお子さんやご家族にたくさんお会いしてきました。
ここでは、過去にご来院されたご両親やお子さんが抱えていらっしゃったお話を踏まえて、皆様の疑問や不安に医師としての立場からお答えさせていただきます。
成長ホルモン治療で本当に背が伸びるの?
〈治療例〉
施述名 | 小児低身長外来 |
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性別 | 男の子 |
治療開始時の年 | 9歳 |
治療開始時身長 | 125.6cm |
成長ホルモンは、元々人間の体の中で分泌されている物質で、子供の骨の成長に大きく関わります。成長ホルモンが体内に分泌されると、子供の骨の両端にある「骨端線」と呼ばれる軟骨部分が成長し、身長が伸びます。逆に、体の中に充分な量の成長ホルモンが分泌されないと、軟骨が成長せず、身長が伸びなくなってしまうのです。
成長ホルモン治療では、何らかの理由で不足している成長ホルモンを注射によって補充します。
つまり、元々人間が持っている骨の成長に必要なホルモンを補うことで、軟骨が成長するのを助けるのです。
このため、適切な時期(骨が成長できる時期)に成長ホルモンを投与すれば、着実に背を伸ばすことができます。
この治療を初めてから1~3ヶ月で効果が現れ、18ヶ月後には、標準伸び率を大きく上回りました。
身長を伸ばすサプリメントではダメなの?
身長を伸ばすと謳っているサプリメントには、成長期のお子さんに必要な栄養(カルシュウムなど)を補給するタイプと、成長ホルモンの分泌を促すためにアルギニンというアミノ酸を補給するタイプがあります。
結論から言うと、どちらのサプリメントも“身長を伸ばす”という点ではまったく効果はありません。子供のホルモン分泌を研究している一般社団法人日本小児内分泌学会でも、“身長を伸ばす”という面においては、サプリメントには効果がないと公式に発表しています。
まず、栄養を補給するタイプのサプリメントですが、いくら栄養を補給しても、骨の成長を促す成長ホルモンは分泌されません。このため、身長は伸びません。
次にアルギニンを補給するタイプのサプリメントですが、確かにアルギニンには成長ホルモンの分泌を促す作用はあります。ただ、アルギニンによって成長ホルモン分泌を促すためには、大量のアルギニンを体内に補給しなければなりません。量で言えば、朝昼晩の三食をすべてアルギニンのサプリにしなければならないほどです。つまり、このタイプのサプリメントを飲んでも、成長ホルモンが分泌される状態までには至らないのです。ですから、身長が伸びることもありません。
一般社団法人日本小児内分泌学会成長ホルモン治療をすれば、誰でも背が伸びる?
〈骨端線が閉じる前のレントゲン〉
〈骨端線が閉じた後のレントゲン〉
子供の骨の両端にある「骨端線」という軟骨は、思春期を過ぎると硬い骨に変化します。この状態になると骨の成長は止まり、それ以上身長は伸びなくなります。このため、成長ホルモン治療が有効なのは思春期前までとなります。この時期であれば、どのお子様でも成長ホルモンを投与することで身長を伸ばすことができます。
思春期は、年齢的には男子で11歳前後、女子で9歳前後に始まり、15~16歳くらいで終わるとされています。ですから、成長ホルモン治療が有効なのは、概ね男子なら12歳まで、女子なら10歳までとなります。この時期より前に成長ホルモン治療を受けると、身長を大きく伸ばせる可能性が高まります。
ただ、思春期の訪れは個人差があるため、例えば男子で11歳を過ぎてもまだ思春期が始まっていない場合もあります。これを判別するためには、骨端線がまだ成長できる状態にあるかを調べる必要があります。このため、当院では初診の際にまずはレントゲン撮影を行い、骨端線の状態を確かめ、どのくらい背を伸ばせるかを予め診断しています。その上で、ご両親とお子様で話し合っていただき、治療をするかしないかをご判断していただいています。
親の身長が低いと治療してもムダ?
確かに身長の高低には遺伝も影響すると考えられています。しかし、子供の骨が成長するかどうかについては、骨端線が伸びる時期に適切な量の成長ホルモンが体内に分泌されていれば、必ず骨は成長します。
「自分も背が小さいし、遺伝だから仕方がない」と諦めるお母さんもいらっしゃいますが、医学的には適切な時期に成長ホルモン投与をすれば、個人差はあるものの、身長は着実に伸びます。ぜひ、諦めずに治療をご検討ください。
注射は痛くないですか?
〈成長ホルモン用注射器〉
注射ですから、もちろんまったくの無痛ということはありませんが、非常に軽い痛みだと思います。
成長ホルモン治療で使われる注射器の針は、太さが0.23mm、長さは5mm程度です。注射というと、インフルエンザの予防接種のようなものを想像される方も多いでしょうが、成長ホルモン注射器の針は、非常に細く短くできています。
予防接種などで使われる注射針の太さは概ね0.64mm~0.72mmですから、成長ホルモン注射器の針は、およそ3分の1の太さです。このため、痛みも非常に少ないです。実際、5~6歳のお子さんでもまったく嫌がらずに自宅で注射しています。
また、操作も非常に簡単です。ご存知の方は、糖尿病のインスリン注射器を想像していただくと良いと思います。
どのくらい通えばいいの? 月に何回診察にいけばいい?
成長ホルモン治療は、時間をかけて体内の成長ホルモンの濃度を上げていく治療ですので、それなりに時間がかかります。理想的には2年間ぐらい続けていただけると、「伸びたねー!」と実感していただけます。
通院は基本的には1ヶ月に一度ご来院いただきます。ただし、問題なく経過しているようであれば、次回の通院からは2ヶ月に一度ご来院いただければ大丈夫です。
成長ホルモン治療は、開始してから3ヶ月後ぐらいから効果は見え始め、1年後からはっきりと効果が見えてくる治療です。
どのくらいお金がかかるの?
多くの場合、成長ホルモン治療は保険外治療になるため、保険内治療に比べれば確かに高額です。また、多くの医療機関では治療費を公開していないため、「一体いくらかかるのだろう……」と不安に思われるのも当然です。
このため、当院では治療費を公開しています。成長ホルモン注射のトライアル価格は1本 39,800円、年齢や体重、骨端線の状態に応じて必要な本数を処方しています。詳しくはこちらの治療費モデル表をご覧ください。
1ヶ月の平均使用本数と費用
21㎏まで
2本×59,800円 119,600円
28㎏まで
3本×59,800万円 179,400円
43㎏まで
4本×59,800万円 239,200円
57㎏まで
5本×59,800万円 299,000円
※成長ホルモン1本(10mg)、アルコール綿、ペン型専用注射針(例:太さ0.23mm、長さ4mm)1ヶ月分、自己注射指導料などを含みます。
※初回のみ、ペン型注射器の購入費用6,800円(税込)がかかります。
お子様の身長でお悩みのお母様へ
冒頭にお伝えしたように、身長はその人の個性です。身長の高い低いは、その人の価値や魅力には関係ありません。
ただ、身長の低さに悩んでいる方の中には、背が伸びる事によって自信を取り戻し、精神的にも、より健康な生活を送れるようになる方もいらっしゃるのも事実です。
私自身の経験では、初診の時にはうつむいていて目を見て話せなかったお子さんが、身長が伸びるにつれて、だんだんと明るくなり、まっすぐこちらを見て話してくれるようになったこともありました。さらに嬉しかったのは、初診の時には暗い表情で思い詰めていたお母さんまで明るくなり、とても素敵な笑顔で笑われるようになりました。
反対に、初診の際にお子さんが既に思春期も終わりの時期に近づいて骨端線が伸びない状態になっていることが分かり、診察室で泣き出してしまったお母さんもいらっしゃいました。「私がもっと早く決断していたら、間に合ったのに」と。
確かに成長ホルモン治療は高額な治療です。しかし、現状の保険治療の範囲では、15歳以下のお子様の中で成長ホルモン治療を受けられるのは、わずか0.6%程度と言われています。
保険が適用される低身長症として診断されるためには、身長が著しく低く成長ホルモンが分泌されていないという二重の条件が必要なのです。逆に言えば、いくら身長が低くても成長ホルモンが出てしまっていると、本当は病気の可能性があるのに治療が受けられない。こうした子供たちは、今の医療制度では、ある意味置き去りにされているとも言えます。
私は成長ホルモン治療を施す医師の1人として、こうした置き去りにされているお子さんたちが、一人でも多く治療の機会を得られるようになることを願ってやみません。
このため、当院では無料カウンセリングを受け付けています。お子さんの身長でお悩みになっていらっしゃっている方は、気軽にご予約ください。お子様の年齢や状況をお聞きした上で、どういう方法があるかを一緒に考えさせていただきたいと思っています。