膝関節脱臼の症状について

膝関節の相対する大腿骨顆部関節面と脛骨顆部関節面の位置関係が全く失われたものを膝関節脱臼と呼びます。交通事故やスポーツなどで膝に非常に大きな力が加わることで起こります。
膝関節が外れる脱臼の際には人体や軟部組織も同時に断裂している場合が多く、その場合重度複合靭帯損傷を引き起こします。

傷を負った直後から激烈な痛みがあり、膝が明らかに変形します。
顕著な腫れと脱臼がみられますが、もっとも重要なのは血管損害の有無になります。膝の後方にある膝窩動脈が損傷している場合下腿以下が壊死して切断が必要になることもあります。下腿のはれ、斑状出血、冷感を感じた場合は血管損傷の可能性が高く緊急手術が必要となります。

膝関節脱臼の原因は?

膝関節脱臼は脛骨近位端が大腿骨遠位端に対してどちらの方向に外れるかによって
・前方脱臼
・後方脱臼
・内側脱臼
・外側脱臼
・回旋脱臼
に分けられます。これはどちらの方向へ圧力がかかったかによって決まり、この位置によって損傷する靭帯も決まります。

この際膝の後方の重要な血管と神経を損傷するのが最も危険で、膝関節を90度前後に曲げている中腰の状態で脛の位置に後ろから強い力を与えられた際発生します。

膝関節後方脱臼の場合後十字靭帯・後方関節包・内外測副靭帯が断裂します。
この膝関節脱臼が起こる可能性は非常にまれですが、もし起こってしまった場合非常に完治の難しい危険な損傷であり、スポーツをする際相手方に対するプレーにも注意が必要です。

膝関節脱臼の治療法とは

まずは手で外れた関節を元に戻す整復を行います。その際膝の動きから脱臼した場所と損傷した靭帯が確定されます。
手による整復が不可能な場合は緊急手術によって整復します。手による整復が行われた後はギプスやシーネで固定して整復位を保ち、そのあとで損傷した靭帯の再建手術を行います。

しかし、靭帯損傷のほかにも骨折や半月板の損傷なども合併していることが多く、すべての靭帯が再建できるとは限りません。
合併損傷がなく、靭帯損傷だけの場合は予後も比較的良好で、正座や和式トイレ以外の日常生活には支障がでない場合もあります。
合併損傷が多い場合は関節拘縮や外傷性変形性関節症による痛み、靭帯不全による膝のぐらつきなどが残ります。