関節リウマチの治療に使われている金製剤

金(GOLD)といえば、宝飾品を思い浮かべる人が多いかもしれません。金が宝飾品に好んで使われるのは、化学的に安定していて腐食もしにくいため、長期間、美しい輝きを保ち続けるからです。

そんな金ですが、以前から医療でも使われている金属です。金はアレルギーを起こしにくいため、生体との相性がよく、歯科医療では金合金のクラウン(かぶせもの)として、むし歯治療に使われてきました。金銀パラジウム合金も、健康保険を利用できる材料としてよく使用されています。

また、関節リウマチの治療には、金製剤が使われています。注射薬として金チオリンゴ酸ナトリウム(商品名:シオゾール)という薬があります。3か月以上投与した関節リウマチ患者107例について調べた臨床試験では、最終改善率が67.3%(72例)と報告されています1)。どのようなメカニズムで効果が発揮されるのか、はっきりわかっていませんが、異常な免疫反応を調整し、炎症を引き起こす物質などの産生を抑えることで、関節リウマチの症状を和らげると考えられています。関節リウマチの治療薬に使われている金製剤には、内服薬もあります。

関節リウマチの治療には、より効果の期待できる新しい薬が登場したため、古くからある金製剤はかつてほど使われていませんが、合併症などで新しいリウマチ薬が使えない場合には、注射薬の金製剤が使われています)。

血液と金イオンを反応させ、PRPを活性化

整形外科領域では、関節リウマチの治療のほかに、近年、一部のPRP(多血小板血漿)療法に金が使われています。

PPR療法は患者自身の血液をもとに、遠心分離装置などを用いてPRPを作製し、患部に注射するものです。PRPには新しい組織や細胞の成長を促す因子が豊富に含まれていることから、炎症をしずめ痛みの緩和に役立つと考えられています。PRP療法は、変形性膝関節症や、スポーツによる筋肉・腱などの外傷・障害の治療によく使われていますが、PRPの作製方法や作製されたPRPにはさまざまな種類があります。

たとえば、PRPには作製方法を変えることで、白血球を多く含むものと、白血球が少ないものをつくることができます。医療機関によってどちらか一方のものを使用しているところもあれば、患者さんの病態によって両方を使い分けているところもあります。

一方、患者さん自身から採取した血液と金イオンを反応させたうえで遠心分離機にかける方法もあります。この方法をとると、傷が治る過程で活躍する細胞同士の働きあいを活性化させることができると考えられています。欧米で先に普及しましたが、日本でもゴルフ肘やテニス肘、40肩・50肩、変形性膝関節症、半月版損傷、アキレス腱損傷の治療などに使われるようになっています(表1)。

このほか、PRPを活性化して濃縮し、フリーズドライ(凍結乾燥)加工して使う治療法もあります。各医療機関では、病態に合わせてPRPの種類、注射の回数などを工夫して治療に役立てています。

1)近藤正一, 治療. 1991; 73(3): 560-566.
2)伊藤聡, 日本内科学会雑誌. 2011; 100(10): 2936-2941