変形性膝関節症(5)
人工膝関節全置換術(TKA)で膝の痛みは治るのか?

傷んだ関節部分を切り取り、人工関節に置き換える

変形性膝関節症による膝の痛みに対して、運動療法、薬物療法、再生医療などの治療が行われますが、それでも強い痛みで日常生活に支障をきたす場合は、手術が検討されます。

手術には大きく分けて、人工膝関節を使う方法と、人工膝関節を使わない方法があります。現在、最もよく行われているのが、人工膝関節を使う方法です。傷んだ膝関節を丸ごと人工膝関節に置き換える人工膝関節全置換術(Total Knee Arthroplasty:TKA)と、摩耗が進んだ片側部分だけを人工関節に置き換える人工膝関節単顆(たんか)置換術(Unicompartmental Knee Arthroplasty:UKA)があります。ここでは、TKAについて説明します。

TKAでは、大腿骨側と脛骨側で傷んでいる膝関節部分を切り取り、それぞれ人工膝関節に置き換えます(図1)。人工膝関節は、大腿骨に取り付ける大腿骨コンポーネント、脛骨に取り付ける脛骨コンポーネント、関節軟骨と半月盤の役割をする脛骨インサートという3つの部品から構成されています。膝関節の状態によっては、もう一つの部品である膝蓋骨(しつがいこつ)コンポーネントを用いる場合もあります。

これらの部品は、コバルトクロム合金、チタン合金、ポリエチレン、セラミックなどさまざまな素材でつくられています。また、TKAでは、計画した設置位置に正確に部品を入れ込む必要があり、手術を手助けするナビゲーションシステムもさまざまなタイプのものが開発されています。

人工膝関節の耐用年数は20~25年

TKAの手術は、膝蓋骨(膝のお皿)のやや内側を15cmほど切開するのが一般的ですが、最近は8~12cm程度の切開で済む最小侵襲手術(MIS)を採用する施設もあります。最小侵襲手術の場合、筋肉へのダメージが少なく、術後の回復が早くなるメリットがあります。麻酔は全身麻酔を用いる施設が多いのですが、複数の麻酔法を組み合わせるなど、施設によって方法が異なります。また、手術による出血は多くありませんが、念のため事前に患者の血液を輸血用に用意してから手術を行う施設もあります。

変形性膝関節症では、両方の膝の手術が必要なケースも少なくありません。トータルの治療期間を短くするため、両膝を同日に手術することもありますが、片方の膝をまず手術して、しばらく時間を置いてからもう一方の膝の手術をするのが一般的です。

手術時間は、1時間半~2時間程度。入院期間は2週間~1か月程度で、術後の早い時期から車椅子、歩行器、杖歩行と順を追って歩行のリハビリテーションに取り組むことになります。

TKAの術後は、膝関節の痛みがなくなるので、日常生活は問題なく送ることができます。ただし、飛んだり跳ねたりといった膝に衝撃が加わる動作は控えなければなりません。ウォーキングやゴルフ程度の軽い運動、膝に負担のかからない水泳などは可能ですが、ジョギングは避ける必要があります。また、正座など膝を深く曲げる動作は、なるべく避けたほうがよいと思われます。

人工膝関節の耐用年数は、以前は15~20年程度と考えられていましたが、素材の改良が進んだこともあり、現在では20~25年は使用可能だと考えられています。耐用年数を過ぎると、新しい人工膝関節に入れ換える手術が必要になる場合もあります。TKAに踏み切るかどうかは、患者の年齢、膝関節の状態などを総合的に考慮する必要があり、医師とよく話し合って決めることが大切です。

《参考資料》
杉山肇(著)ほか, 名医が語る最新・最良の治療 変形性関節症. 法研 2012