膝関節の内側と外側で、痛みに差がある場合に適している

人工膝関節を用いた手術には、膝関節をすべて人工関節に置き換える人工膝関節全置換術(TKA)と、膝関節の一部を人工関節に置き換える人工膝関節単顆(たんか)置換術(UKA)(図1)の2種類があります。どのような場合にUKAを選ぶのでしょうか。

変形性膝関節症では、膝関節の内側が大きく変形しているO脚(内反)タイプと、外側が大きく変形しているX脚(外反)タイプがあります。膝関節の内側だけに強い痛みがあり、外側はあまり痛みがないO脚タイプの場合、それぞれ片側の部分だけ人工膝関節に置き換えることが可能です。UKAを選ぶことができるのは、このように膝関節の内側と外側で痛みに差がある場合です。

また、膝にとって重要な働きを担う4つの靱帯(前・後十字靱帯、内側・外側側副靱帯)に損傷がないこと、膝関節の変形があまり進んでいないことなども、UKAを選ぶことができる条件となっています。

UKAはTKAに比べて、表1のようなメリットがあります。

表1 UKAのメリット

  • 手術による傷口が小さく、回復が早い。(大腿骨、脛骨の切除範囲が狭く、使用する部品のサイズも小さい)
  • 手術による出血量が少ない。
  • 手術により損傷を受ける組織が少なく、術後の痛みが少ない。
  • 自分の骨や靱帯を温存できるので、術後の膝の動きが滑らかで違和感が少ない。

半月板や関節軟骨をきれいにする関節鏡視下手術

人工膝関節を用いない手術についても紹介しておきます。一つは関節鏡視下手術です。膝関節に関節鏡(関節手術用の内視鏡)を入れて、モニターで映像をみながら手術を行います。

変形性膝関節症では、関節軟骨の摩耗、毛羽立ち、亀裂などが生じており、痛みを引き起こす原因になっています。また、半月板の損傷も痛みの要因となります。関節鏡視下手術では、損傷した半月板を取り除いたり、毛羽立っている関節軟骨を削り取ったりして、膝の関節内をきれいに整えることで痛みを取り除きます。入院は2、3日ほどで、他の手術に比べて体の負担が小さいのも利点です。病気の進行度が軽度から中等度の人に適しています。

術後の生活を考えて高位脛骨骨切り術を選ぶ場合も

人工膝関節を用いない手術として、高位脛骨骨切り術(こういけいこつこつきりじゅつ)が行われることもあります。これは、O脚を矯正し、まっすぐな脚に近づける手術です。O脚タイプの軽度から中等度の人が対象となり、O脚の程度が極端に強い場合、この手術は施行できません。人工膝関節を用いた手術ではなく、あえて高位脛骨骨切り術を選ぶのは、趣味や仕事で正座をしたり、膝を地面に付けて作業したりする必要のある人です。人工膝関節を入れてしまうと、このような動作が難しくなりますが、高位脛骨骨切り術の場合、このような動作も可能になります。入院期間は5~6週間です。

《参考資料》
杉山肇(著)ほか, 名医が語る最新・最良の治療 変形性関節症. 法研 2012