靭帯損傷とは?症状や手術が必要なケースについて

靭帯損傷(じんたいそんしょう)とは

靭帯とは、関節において骨と骨をつなぐ、コラーゲンを主成分とした弾力性に富んだ組織です。関節が過剰な方向に動かないよう、固定して安定をさせているのが靭帯の役割で、私たちの動作や運動においては非常に重要な役割を果たしています。

その靭帯が、事故やスポーツなどで過剰な力を受けて損傷してしまうことを「靭帯損傷」といいます。なかでも、膝の靭帯損傷はスポーツの場面などで起こりやすく、多くの競技選手が受傷するケガのひとつです。ここでは膝の靭帯損傷について、症状や診断方法、治療方法などについて詳しく解説していきます。

膝靱帯損傷のことを指す場合が多い

靭帯は、体にあるほとんどの関節に存在しており、その部位ごとに名称がつけられています。そのため、一口に靭帯損傷といっても、どこの関節のどこの靭帯なのかを明確にする必要があります。
しかし、膝の靭帯損傷は比較的頻度が高く、靭帯損傷=膝靭帯損傷と指すことが多くなっています。厳密には、足首の三角靭帯損傷、肘の内側側副靭帯損傷といったように、各部位ごとでケガの名前が異なることは知っておきましょう。

捻挫と靭帯損傷の違い

関節をひねって痛めた場合、「捻挫ですね」といわれたり、「靭帯損傷でしょう」といわれたりすることがありますが、捻挫と靭帯損傷はどう違うのでしょうか。

捻挫は、関節に強いねじれなどが加わり、生理的な可動範囲を超えて組織を損傷することをいいます。その際、損傷したのが靭帯以外の筋や腱、関節包であれば「捻挫」、靭帯まで損傷が及んでいれば「靭帯損傷」というように判別されます。

捻挫と聞くと軽いケガ、靭帯損傷と聞くと重症というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし捻挫をした時点で、靭帯にも損傷がみられることがあったり、軽い捻挫でも繰り返すと靭帯損傷に至ったりすることがあるので、軽く捉えないことが重要です。

膝にある4種類の靭帯

膝には4種類の主要な靭帯が存在しています。それぞれの役割についてみていきましょう。
膝靱帯損傷
  • 前十字靭帯 前十字靭帯は、膝の関節内で大腿骨(太ももの骨)の後方から、脛骨(すねの骨)の前方に付く靭帯です。主に、脛骨が前にずれたり、ねじれたりするのを防いでいる役割を果たしています。
  • 後十字靭帯 後十字靭帯は、膝の関節内で大腿骨の前方から、脛骨の後方に付く靭帯です。主に脛骨が後方にずれたり、ねじれたりするのを防いでいます。前十字靭帯と後十字靭帯は、お互いに交差するように走行して、膝の安定性を高めています。
  • 内側側副靱帯 内側側副靱帯は、関節外で膝の内側から大腿骨と脛骨をつなぐ靭帯です。主に、膝が内側に傾いたり、ねじれたりするのを防いでいます。まれに内側側副靱帯は前十字靭帯、内側半月板との損傷を合併することがあります。
  • 外側側副靱帯 外側側副靱帯は、関節外で膝の外側から大腿骨と脛骨をつなぐ靭帯です。主に膝が外側に傾いたり、ねじれたりするのを防いでいます。4つの靭帯のなかでは、損傷する頻度が比較的少ないのが特徴です。

症状・痛みの特徴

靭帯損傷の受傷時は、ブツっという音を感じて、強い痛みが生じることが多いです。その後、靭帯からの出血により膝周囲に腫れや熱感が生じ、痛みが増すため、動かしにくくなってきます。体重をかけると痛みがあるため、まともに歩くことは困難になるでしょう。また、深く膝を曲げることができず、立ち座りもまともにできなくなります。
このような急性の症状は、数週間で徐々に引いてきます。しかし膝の不安定性が残り、運動をすると痛みが再発することが多く、スポーツなどの激しい運動は困難になります。

靭帯損傷の原因

膝の靭帯損傷は、スポーツや事故などによる外力が主な原因になります。特にサッカーやバスケットボール、スキーなどの膝をよく使うスポーツでの損傷が多いのが特徴です。
動作としては、ダッシュからの急な方向転換やストップ、ジャンプの着地など、膝にねじれや剪断力が加わることが原因になることが多いです。また、相手からのタックルや事故による外力によって、膝がねじれて損傷することも多くみられます。
靭帯損傷は、部位によって損傷しやすい動きが異なるのでそれぞれの特徴について紹介します。
  • 前十字靭帯 膝下が前内方にずれるような力が加わる
    例:ジャンプの着地やダッシュからのストップ動作で、膝が過度に内側に入ってしまう。
  • 後十字靭帯 膝下が後方にずれるような力が加わる
    例:車の事故などで膝下に前方から強い力が加わる。
  • 内側側副靱帯 膝下が内側に傾く力が加わる
    例:相手からのタックルなどで膝の外側から内側に強く押される。X脚を強制されるような力が加わる
  • 外側側副靱帯 膝下が外側に傾く力が加わる
    例:相手からのタックルなどで膝の内側から外側に強く押される。O脚が強制されるような力が加わる

膝のケガへの応急処置

膝の靭帯損傷が疑われる場合、直ちに病院を受診することが望ましいですが、状況によっては受診するまでに時間がかかってしまうこともあるでしょう。その場合、ケガの応急処置をしておくことが重要で、適切な処置をすることは早期回復につながります。

ケガをした際に一般的におこなわれている応急処置を「RICE処置」といいます。RICE処置とは、Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字をとったもので、多くのスポーツ現場などでおこなわれている応急処置です。それぞれの方法について具体的にみてみましょう。
  • Rest(安静) 患部の損傷を広げないため、極力動かさないようにして安静を保ちます。必要に応じて、テーピングや副子(ふくし)などで固定をします。
  • Ice(冷却) 腫れや内出血を抑えるため、氷や保冷剤などで患部を冷やします。20分程度冷やしたら一旦間隔をおいて、再度痛みが強くなってきたらまた冷やすことを何度か繰り返します。
  • Compression(圧迫) 患部をテーピングや包帯などで巻いて圧迫し、腫れや内出血を最小限に抑えます。きつく巻きすぎると、血行障害や神経障害を起こすことがあるので、しびれや変色を起こさないように注意が必要です。
  • Elevation(挙上) 患部を心臓よりも高い位置に保持します。心臓へ血液が戻るのを促すため、腫れを最小限に抑えることが目的です。

靭帯損傷の診断・治療方法

靭帯損傷の診断・治療方法を紹介します。靭帯損傷は損傷した部位、程度によって治療方法が変わってくるので、正確な診断を受けることが重要です。自己判断で治療したり、放置したりすると後に重大なケガにつながる可能性もあるため、必ず病院を受診するようにしましょう。

診断方法

診察では、まず触診、視診、整形外科的テストによって健側と比較をします。整形外科的テストでは、損傷が疑われる靭帯にストレスをかけて、痛みが強まるのか、緩みが生じるのかを診て靭帯損傷の可能性があるのかを確認します。
はっきりと診断を下すには画像所見が必要ですが、レントゲンでは正確な判断をすることができません。そのため、靭帯損傷が疑われる場合はMRI検査をおこないます。MRIでは損傷部位や程度など、詳細な所見を抽出することが可能です。

治療方法は損傷部位によって異なる

靭帯損傷の治療方法は主に、保存療法と手術療法の2つが挙げられます。保存療法は、装具やサポーターなどで患部を保護しながら回復を待つ方法です。手術療法は、外科的な処置を施して患部を修復する方法です。損傷した部位によって治療方法が異なるので、それぞれに分けて説明してきます。

  • 前十字靭帯損傷 前十字靭帯は、組織への血流が乏しいため、自然治癒することがほとんどありません。そのため、治療は手術療法が第一選択肢となります。しかし程度が軽く、スポーツをしない方や日常生活に支障がなければ良いという方は、保存療法が選択される場合もあります。
  • 後十字靭帯損傷 後十字靭帯は、前十字靭帯よりも太く、血流が良好であることから自然治癒能力が高いため、まずは保存療法が選択されることが多いです。しかし自然治癒が困難な箇所の断裂や膝の不安定性が強い場合は、手術療法をおこなうこともあります。
  • 内側側副靱帯損傷・外側側副靱帯損傷 内側側副靱帯と外側側副靱帯は損傷の程度によって3段階に分類されます。
    ・Ⅰ度:痛みはあるが、膝の不安定性がない
    ・Ⅱ度:痛みがあり、膝を30度曲げた位置で左右への不安定性がある
    ・Ⅲ度:痛みがあり、膝を30度曲げた位置と、完全に伸ばした位置での不安定性がある
  • Elevation(挙上) 患部を心臓よりも高い位置に保持します。心臓へ血液が戻るのを促すため、腫れを最小限に抑えることが目的です。

負荷を減らしながら日常生活をするケース

膝の靭帯を損傷しても、日常生活に支障がなければ良いという方、スポーツをする機会がないという方は積極的に手術をせずに保存療法で経過をみていくことが多いです。しかし将来的に膝の軟骨が変形したり、半月板が傷んだりするリスクもあるため、膝への負荷を減らしながら日常生活を送っていく必要があります。

手術をするケース

スポーツで現役復帰をしたい方や完治させたい方は手術療法が選択されます。膝の靭帯損傷で主におこなわれるのは靭帯再建術です。靭帯再建術は、自分の腱や靭帯を採取して、損傷した靭帯の位置に固定する方法で、ほとんどが内視鏡でおこなわれるため、傷口は小さくて済みます。
手術後は早期からリハビリが開始されます。リハビリでは、理学療法士のサポートの元、膝の可動域訓練、筋力トレーニング、動作訓練などをおこなっていきます。
ケガの部位や程度、競技特性などから個人差もありますが、手術後4〜8ヶ月はリハビリを継続しておこなう必要があります。

手術をした場合でもスポーツを再開することは可能?

膝の靭帯損傷で手術をした場合でも、スポーツで現役復帰をすることは可能です。しかし復帰するまでには、前十字靭帯損傷の場合は8ヶ月程度、それ以外の靭帯でも6ヶ月程度の時間を要します。また、その間はスポーツでの現役復帰に向けたリハビリを継続していかなければなりません。同じケガをしないためにも、筋力をつけたり、パフォーマンスを向上させたりして、万全の状態を期してから復帰することが理想的です。

監修医師紹介

監修医師紹介

西新宿整形外科クリニック 川原 昭久 院長 Akihisa Kawahara

  • 【所属学会】
    日本整形外科学会
  • 【資格】
    日本専門医機講認定 整形外科専門医
  • 【学会発表実績(筆頭演者として)】
    神奈川整形災害外科研究会