前腕は橈骨と尺骨という2本の骨で支えられており、転倒した際手のひらをついたり、自転車やバイクなどの二輪車を運転している際転んだりしたときに、橈骨が手首のあたりで折れることで生じる骨折です。
手首に強い痛みや腫れが短時間で現れます。反対の手で支えなければならず、手に力が入らなくなります。折れた骨片や腫れによって神経が圧迫され、指にしびれが出ることもあります。
高齢の女性は骨が脆くなっていることが多く折れやすい部位ですが、高齢者以外にも高所からの転落や交通事故などで手首に強い外傷が加わることで骨折してしまいます。
レントゲン検査を用いて手首側の橈骨に骨折が見られるか確認します。
骨折した部位によって名称が異なり、手の甲の方向にずれている場合を「コレス骨折」、手のひら側にずれている場合を「スミス骨折」と呼ばれます。
骨の曲がり・ずれがある場合は、麻酔で痛みを抑えた状態でずれた骨片を元に戻す整復を行います。
骨片がずれなければギプスで約4~6週間ほど固定します。しかし、徐々に骨片がずれたり、ずれたまま整復不可能な場合は手術で固定する必要があります。
子供の骨折の場合は、骨の癒合が早いため、骨片がずれた場合でも手術が必要ないことも多いです。
手首にある手根管というトンネル状の構造内で正中神経が圧迫されているところに、手首(手関節)の運動が加わることで生じます。
初期は人指し指、中指にしびれ・痛みが現れ、最終的に親指〜薬指の親指側半分がしびれます。夜間から明け方にかけてしびれ、痛みが強くなることが多く、親指の付け根の筋肉(母指球筋)がやせ、細かい作業が難しくなります。
特発性の場合が多くはっきりとした原因は不明ですが、女性ホルモンの乱れによる腱鞘のむくみが原因ともいわれ、特に妊娠・出産期や更年期の女性に多くみられます。 他にも骨折などの怪我や手を酷使している、また、長期間透析をしている人にも起こりやすく、腫瘍や腫瘤などが原因で発症する場合もあります。
手首を軽くたたくとしびれや痛みが指先に響く場合に診断されます。
また、両手の手の甲を下向きで垂直に合わせ、そのままの姿勢で症状が悪化するかどうかを診断する「ファレンテスト」を行います。
筋力低下や筋萎縮があるか検査する場合は筋電図検査や正中神経の伝導速度を調べます。腫瘤が原因である可能性が疑われる場合、エコーやMRIなどの検査を行います。
ビタミン剤や消炎鎮痛剤などの飲み薬、塗布薬などの薬物療法や、運動や仕事を控えたり患部を固定して安静にしたり、手根管内腱鞘内注射で腱鞘炎を鎮めるなどの保存的療法を行います。
症状が改善されない場合や母指球筋の萎縮がみられる場合、腫瘤が原因の場合は手術を行います。
手関節は8つの手根骨で構成され、舟状骨は船のような形状で、手根骨の中でも重要な骨の1つです。この部位が骨折することで発症します。
通常のレントゲン撮影では見えにくく、さらにあまり強い痛みが現れないことが多いため、捻挫と勘違いされて気づかず長期間放置されることも少なくありません。
長期間放置すると骨折した骨が癒着しないまま関節のように動いてしまう「偽関節」になってしまうこともあります。偽関節なると手首の関節が変形し、痛みが生じて力が入れづらい、動きづらいといった症状があらわれます。
手首の腫れや痛みが続き、動かしづらくなった場合は舟状骨骨折や舟状骨偽関節の疑いがあるため、レントゲン撮影を行います。
骨折線が写らず見逃され、偽関節になってしまうこともあるため、CTやMRIを撮ると骨折部の有無がはっきりわかるため診断できます。
舟状骨は軟骨に囲まれていて血行が悪いため、非常に治りにくい部位でもあります。早期発見できても6週間以上の長期間の固定が必要なこともあります。近年では特殊なボルトを使用して骨折部を固定することで治療期間を早めることも可能になっています。
擬関節になってしまった場合、放置すると手首全体に支障をきたすことも多いため、手術が必要になることもあります。手首の痛みは放置せず、まずは整形外科医にご相談ください。
手関節に8つある手根骨の中の1つで、中心に位置するのが月状骨です。
月状骨は軟骨に囲まれ血行が悪く、血行不良などが原因で徐々につぶれて痛みがでたり手首の動きが悪くなります。進行すると壊死して扁平化してしまいます。 はっきりとした原因は不明ですが、手を使う職業の20〜40代の若年層の男性に多くみられ、月状骨の小さな骨折が原因とも言われています。
手に力を入れる作業のあと、手首に痛みや腫れ、筋力の低下、動かしづらいといった症状に加え、手の甲側から手首の中央を押すと痛みが出ます。
レントゲン検査で月状骨に変形が生じていると診断できます。また、MRI検査でより詳しく調べることもできます。
症状や年齢などによって治療法が異なりますが、早期や痛みが強い時はギプスや装具を用いて固定して回復することもありますが、改善がみられない場合は状況に応じて手術を行います。
月状骨にかかる負荷を減らすために周りの骨を切る治療や、骨移植などを行います。
進行している場合、壊死した月状骨を摘出、代わりに腱球(腱を丸めたもの)を挿入する方法などを行います。
手首から親指にかけて、親指を伸ばす役割を持つ「短母指伸筋腱」と、親指を広げる役割を持つ「長母指外転筋腱」の2本の腱が、トンネル状の腱鞘を通っており、この部分に起きる腱鞘炎のことをドケルバン病と呼びます。
親指に負荷がかかることで擦れて腱鞘が分厚くなったり、腱が痛むことで腫れや痛みが生じます。
スポーツや仕事によって手を酷使しやすい人に多くみられ、妊娠出産期の女性や更年期の女性にも症状が多く出ます。
「フィンケルシュタインテスト」と呼ばれる検査などで診断します。
「岩原・野末のサイン」を用いて自分で確認することもできます。
フィンケルシュタインテスト
親指を、もう一方の手で小指に向けて引っ張り、痛みが強くなるかどうかで診断します。
岩原・野末のサイン
手のひら側に手首を直角に曲げ、親指を大きく開いたとき、痛みが痛みが強くなるかどうかで診断します。
固定具などを装着し、患部を安静にしたり、薬物療法や腱鞘内にステロイド注射を打つなどの保存的療法を行います。
改善が見られない場合や何度も再発する場合は、腱鞘を一部切離することでトンネルを広げて痛みや動きを改善する手術を行います。
ガングリオンは、関節や腱鞘などの潤滑剤の役割がある滑液が濃縮されて、ゼリー状の液体が詰まった腫瘤のことをいいます。主に10代~20代の比較的若い女性に見られます。手の甲に発症しやすく、更に骨・筋肉・神経等に確認された例もあります。
米粒台の大きさからピンポン玉ほどの腫瘤ができ、軟らかいものや硬いものまで様々です。通常無症状であることが多いですが、まれに神経の近くに生じることもあり、神経を圧迫してしびれや痛み、麻痺などを起こす場合もあります。
触診で腫瘤の有無を確認し、針を刺した時にゼリー状の液体が確認できた場合に、ガングリオンと診断されます。
触診で確認できないほど小さなガングリオン、更に慢性的な痛みが起こるオカルトガングリオンなどは確認しずらいため、MRIや超音波検査を用いることがあります。
腫瘤以外に痛みやしびれがない場合、放置しても心配はありません。しかし、肥大化したり強い痛みがある場合や、圧迫されて神経症状が起こっている場合は治療が必要となります。
治療内容には、注射器で吸引して内容物を取り除いたり、圧迫して潰すなどの治療法があります。再発を繰り返してしまう場合、ガングリオンそのものを摘出する必要があります。
診断するには整形外科を受診する必要がありますので、まずはご相談ください。