運動器不安定症は、高齢者で、バランス能力や歩行・移動能力の低下したり、転倒のリスクが高まった日常生活での障害を伴う疾患のことをいいます。
重症化を防ぐために、正しい診断と運動器リハビリテーションなどの介入が大切です。
運動器障害は気づかないまま徐々に進行していきますので、ご自分だけではなく周りの方の気づきも必要です。
以下の診断方法があります。
開眼片脚起立時間
3m Timed up and go test
開眼片脚起立時間は、両手を腰にあて、片脚を床から5cm程あげ、立っていられる時間を測定します。
大きく体が揺れて倒れそうになるか、あげた足が床に着くまでの時間を測定します。
また、立ち足がずれても終了となります。
3m Timed up and go testでは、椅子に座った姿勢から立ち上がり、3m先の目印点で折り返し、椅子に座るまでの時間を測定します。
当院では運動機能の検査の際は、安全を第一に転倒を防ぐため即座につかまれる物のそばで実施しております。
また看護師が傍に立ち、倒れそうになったら支えられるように行っております。
骨の曲がりやずれがある場合、まず腕の麻酔や静脈麻酔で痛みをとった上で、整復操作(手を指先の方向に引っ張り、ずれた骨片を元に戻す整復)を行います。引っ張る力をゆるめても骨片がずれなければそのままギプスで約4~6週間ほど固定します。しかし骨片がずれてきたり、手首の関節に面した骨片の一部がずれたままで整復不可能な場合は手術が必要となります。
手術にはレントゲンで透視しながら、鋼線を刺入して骨折部を固定する経皮鋼線刺入法や手前の骨片と手首側の骨片にピンを刺入してそれに牽引装置を取り付ける創外固定法、骨折部を直接開けて骨片を整復してプレート固定する方法などがあります。近年では、ネジとプレートがかみ合うロッキングプレートで固定して、早くから手首の関節を動かせる方法が多く用いられるようになっています。
子供の骨折の場合、骨片の整復が不完全でも骨の癒合が早いため手術が必要ない場合が多いです。
骨が折れることだけが、骨折と呼ぶ訳ではなく、骨が壊れることを総称して骨折と言います。
ヒビも、骨の一部分が欠けたり、凹んだ場合も骨折といいます。
骨折は骨に力がかかって発生します。健康な骨では、かなり大きな力がかからないと骨折しません。しかし、骨全体が弱っていたり、骨の一部が溶けていたりすると、弱い力でも骨折します(病的骨折)。
また、健康な骨に弱い力がかかる場合でも、同じ場所に繰り返し長期間かかり続けると骨折することがあります(疲労骨折)。
骨とその周囲は神経と血管が豊富ですので、骨折するとその部位に痛みと腫脹が出現します。骨折がひどい場合は、動かせなくなったり、外見が変形したりします。
打撲や関節脱臼でも骨折と似た症状が出るので、診断をはっきりさせるにはX線(レントゲン)写真を撮ります。
患部の痛みや腫れが強いのに骨折がはっきりしない場合、CTやMRIでの精査をお勧めします。
骨折がひどい場合は手術が必要な場合がありますので、まずは早めに受診することをお勧めします。
ロコモティブシンドロームとは、運動器(骨、関節、筋肉、神経など)の障害によって「立つ」「歩く」といった移動機能が低下した状態です。 運動器は広く人の健康の根幹であるという考えで、年をとることに否定的なニュアンスを持ち込まないことが大切であるという意味でこの言葉が生まれました。
また、自身で気づくためのツールとして「ロコチェック(ロコモーションチェック)」と、ロコモティブシンドローム対策の運動「ロコトレ(ロコモーショントレーニング)」のパンフレットが作成されています。
診断には下記のような方法があります。
開眼片脚起立時間
3m Timed up and go test
ロコモティブシンドロームの予防には、毎日の運動習慣とバランスの良い食生活が要です。片脚立ちとスクワットが自宅で簡単安全に行うことができ、おすすめです。ロコモティブシンドロームは回復可能ですので、筋力が衰えないよう筋力・バランストレーニングや毎日の食事を意識し気を付けるようにしましょう。
子どもから痛みの訴えがあった時に、「しばらく様子を見てから」「関節が動くから大丈夫」などと安易に自己判断せず、「触ると痛みを訴え泣く」「手を使わない」「足に体重をかけられない」などの症状があれば、骨折の可能性を疑い整形外科を受診してください。
※乳幼児では、腫れが少ない場合があり、骨折していない部分の痛みを訴える場合もあります。
原因としては、転倒・転落によるものがほとんどで、肘関節や前腕などの上肢の骨折が半数を占めています。その次に多いのが鎖骨や下腿の骨折となります。
小児は成人に比べて、骨形成が旺盛で骨折の治りが早いです。
視診・観察で疼痛部位を予測します。骨折部分を確認したのちに、レントゲン撮影を行います。
受傷直後にはレントゲンで骨折を確認できないことや、骨折線が現れず弯曲する急性塑性変形もあります。また、骨折に関節脱臼を伴うこともあります。
骨端軟骨や関節内の骨折では診断が難しいので、骨折が疑われる側だけでなく健側も撮影をし、ギプスで固定して定期的なX線観察を行います。
治療は保存療法と手術療法があり、X線所見を参考にして治療法を選択します。
関節周囲の骨折以外は自家矯正が可能な場合があるので、通常は徒手整復による保存療法を行います。血管損傷や神経損傷がないことを確認し、ギプスで固定します。成長期は骨が癒合しやすいため、1~2カ月経てば安定します。
整復後に変形が残ったり骨折部が離れたりしても、軽度なら心配要りません。
不安定な関節周囲の骨折や大きく転位した骨折は、入院して持続牽引や経皮ピンニング手術を行います。
関節リウマチとは、関節に痛みや腫れが生じ、放っておくと関節が変形してしまう病気です。30~50代の女性に多く、手の指や手首など小さい関節を中心に症状があらわれるのが特徴です。関節リウマチの原因は、自己免疫機能の異常と考えられています。免疫機能は、本来、外部から体内に侵入する異物(細菌やウイルスなど)を攻撃し、排除する役割を担っていますが、異常をきたすと、誤って、異物ではない自分自身を攻撃してしまいます。
関節リウマチの診察は、関節の痛みや腫れなどの症状を確認するほか、関節リウマチに関する検査をおこないます。検査は、血液検査と尿検査、画像検査です。
血液検査では、免疫・炎症・血液の成分、また、肺・肝臓・腎臓の働きなどを調べます。尿検査では、尿たんぱくや尿沈渣を調べ、合併症の有無などをみます。
画像検査(レントゲン検査やMRI検査、エコー検査など)では、関節の状態や炎症の度合いを調べます。症状や検査結果、関節リウマチの診断のためスコアなどを用いて、診断をおこなっていきます。
関節リウマチには、明確な予防方法はありません。関節リウマチは自己免疫疾患であり、免疫機能が異常をきたす原因が明らかになっていないからです。しかし、遺伝的素因と環境因子が複雑に絡み合っているといわれています。リウマチ因子と関連がある、精神的なストレスや喫煙・過剰な飲酒を減らすと良いでしょう。
関節リウマチではないかと思ったら、早めの受診をおすすめします。
治療方法は、薬物療法、手術療法、リハビリが基本です。痛みや関節破壊の状況に合わせ、治療方法を選択します。治療目的は、病気の進行を抑える・痛みの緩和・機能障害の回復です。
薬物療法では、関節リウマチの進行を抑える薬(抗リウマチ薬・生物学的製剤・JAK阻害剤など)、痛みや炎症を抑える薬(NSAID・ステロイドなど)を使用します。関節破壊は早期から進むため、症状のコントロールと関節破壊の予防を薬物療法でおこないます。
手術療法は、滑膜切除術・機能再建手術(人工関節置換術・関節形成術・関節固定術)などがあります。薬物療法で症状がコントロールできない場合などに選択します。
リハビリは、関節の運動性を維持するため、エクササイズなどの運動療法や、痛みやこわばりを緩和するための温熱療法などがあります。
捻挫はスポーツや転倒などで、関節に無理な力が加わり、靱帯や関節包などが損傷する怪我です。 レントゲン(X線)検査で異常がない(写らない)関節の怪我は捻挫という診断になります。具合的な部分としては、靭帯や腱などの軟部組織や、軟骨の怪我が挙げられます。 そのため、ただの捻挫だと思っていても靱帯が断裂していたり、骨折している可能性があります。 捻挫をしても、痛みを感じにくいケースがありますので放置しがちですが次のような場合は早めに整形外科などを受診しましょう。
腫れがひどく、歩けないほど痛い場合
関節がグラグラして不安定な場合
安静に過ごして1~2週間経過しても痛みが治まらない場合
腫れや痛みが強い場合はアイシングや挙上、固定、安静をすることが大事です。
解熱鎮痛剤の内服や外用なども有効です。
痛風は、身体の中にある尿酸が関節の中で結晶となり、関節炎を引き起こす病気です。女性よりも男性に多く発症します。
関節炎は突然起こるため、痛風発作とも呼ばれています。
発症する部位は、足の親指の付け根が最も多く、足首や膝の関節にも症状が出ることがあります。
通常、2~3日歩けないほどの痛みがあり、1週間から10日ほど経つと、次第に痛みは治まり、しばらくすると全く症状がなくなります。しかし、多くの場合、1年以内に同じような症状が現れます。痛風発作を繰り返すことで、痛みの出る関節が足首や膝などへ広がり、発作が出る間隔も短くなっていきます。
また、治療せず放置することで、皮膚の下に尿酸の塊ができる痛風結節が現れたり、尿酸が腎臓にたまることで腎機能が低下したりすることがあります。
痛風の原因は、尿酸が増えすぎる高尿酸血症です。身体の中に尿酸が増えることで、尿酸は関節の軟骨や滑膜(かつまく)につき、結晶となります。関節には尿酸の結晶がたまり、それを免疫細胞の白血球が異物ととらえて攻撃することで、関節炎である痛風が引き起こされます。
また、尿酸はプリン体からできているため、プリン体の増加が尿酸の増加につながり、痛風の原因になっています。プリン体は、過剰摂取はもちろん、過剰生成、排泄不全により増加します。プリン体の多い食品としては、ビールや紹興酒、鶏レバーやマイワシの干物、白子、あんこうなどがあります。
痛風の検査・診断には、血液検査・尿検査・レントゲンやエコー検査が用いられます。
確実な診断は、関節の中に尿酸結晶があることを証明することですが、関節に針を刺しておこなう検査は患者さまの身体への侵襲が大きいため、痛風の症状や血液検査などの結果から総合的に診断することが多いです。
血液検査では、痛風の診断に関わる尿酸値を測るとともに、肝機能やコレステロール値、血糖値なども測り、合併症の有無も検査します。
また、尿検査は血液検査と合わせておこない、尿中と血中の尿酸値及びクレアチニン値を比較します。これらにより、痛風のタイプや腎機能の状態を把握することができます。
その他、必要に応じてレントゲン検査で関節リウマチなどの痛風と類似した病気との鑑別をしたり、エコー検査では、関節内の尿酸結晶の量や炎症の程度を把握したりします。
痛風のタイプに合わせて薬が処方されます。
痛風関節炎の治療
高尿酸血症の治療
痛風の予防方法は、食事や運動をはじめ、生活習慣の改善です。
生活習慣の改善が大切
痛風の予防に良い食事
適度な有酸素運動
痛風の予防には生活習慣の改善が大切です。まずは体重コントロールが重要になり、肥満を解消することで尿酸値は下がります。肥満と尿酸には関連があり、皮下脂肪が蓄積していると、尿酸が排泄しづらく、内臓脂肪が蓄積していると尿酸はつくられやすくなります。プリン体を多く含んでいるビールなどのアルコール類を避け、肥満の方は減量を試みましょう。
痛風についての心配ごとは、整形外科にご相談ください。
しびれには、長時間正座をした時のように触っても何も感じない、あるいは逆にピリピリして触れられると痛みを感じるなど感覚の異常が起こるしびれと、手足に力が入らない、うまく動かせないなど運動機能の麻痺が起こるしびれの二通りがあります。
手足に起こるしびれの多くは、手や足にある末端の神経と脳を結ぶ経路のどこかに障害が起こるために起こります。しかし、しびれの背後には重い病気が隠されていることもあるため、症状に応じた対処が必要です。
しびれの原因には、脳や脳周辺の病気、大きな神経の経路である脊髄に起こる障害、手や足など末梢の神経に起こる障害などがあります。こうしたしびれの背後にある病気には、脳卒中や脳腫瘍、頸椎や脊椎のずれとヘルニア、糖尿病やアルコールの多飲による末梢神経の損傷などが考えられます。
脳の病気が原因のしびれ
しびれを起こす病気には糖尿病などの内科的疾患もありますが、しびれを引き起こす直接の原因となるのは主に脳の病気です。しびれの原因となる代表的な脳の病気には脳腫瘍や脳卒中があり、脳の血管が詰まる脳梗塞と頭蓋内での出血を合わせて脳卒中と呼んでいます。
脳卒中には、血栓などで脳の血管が詰まる脳梗塞、脳内の血管が破れて出血する脳出血、脳の外側で出血が起こるくも膜下出血、脳梗塞の症状が現れて短時間で収まる一過性脳虚血発作の4タイプがあります。脳卒中では手足のしびれだけでなく次のような症状をともないますが、いずれも突然起こることと身体の半身に起こりやすいことが特徴です。
激しい頭痛、吐き気
ろれつが回らない、うまくしゃべれない、言葉が出てこない
片目が見えないか見えにくい、ものが二重に見える
うまく歩けない、ふらつく
人の言うことが理解できない
このような症状が突然現れた場合は脳卒中を疑い、すぐに119番で救急車を呼んでください。
■ 脳腫瘍(のうしゅよう)
脳腫瘍の症状は、身体や顔の半身に起こる麻痺やしびれ、歩けない・ふらつく、ろれつが回らない、言葉が出ない、人の言うことが理解できない、ものが二重に見えるなど、脳卒中と似た症状が現れます。ただし、脳卒中ではこれらの症状が突然現れるのに対し、脳腫瘍ではいつの間にか現れ、腫瘍が大きくなるにつれて症状も徐々に強くなっていくのが特徴です。
また、脳腫瘍でも頭痛が起こりますが、脳卒中のように突然激しい頭痛に襲われるのではなく、朝起きたときに起こりやすくなるのが特徴です。脳腫瘍でもしびれだけでなく他の症状が複合して現れます。
脊椎(せきつい)が原因のしびれ
背骨は脊柱、脊椎とも呼ばれ、首から骨盤までを椎骨(ついこつ)という小さな骨が連なる構造をしています。脊椎のなかには神経の束である脊髄が通っており、脊椎の異常や損傷によって脊髄が圧迫されることで痛みやしびれを起こします。脊椎が原因で起こるしびれには、脊椎の首の部分で起こる頚椎症(けいついしょう)と、腰部の腰椎で起こる腰椎分離症、首と腰のどちらにも起こる椎間板ヘルニアなどがあります。
頚椎症
頸椎・腰椎椎間板ヘルニア
腰椎分離症・分離すべり症
手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)
■ 女性のしびれは更年期によるものの可能性も
手根管症候群のほかにも、女性ホルモンが関係していると思われるしびれの症状は少なくありません。女性ホルモンのバランスが崩れやすい更年期や妊娠出産期の女性には、以下の症状や病気が多いといわれています。
へバーデン結節、ブシャール結節
母指CM関節症
ばね指
ドケルバン病
これらの病気は女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が減少することで起こりやすくなります。そのため、更年期以降の女性にはしびれの症状が多く現れるようになります。
■ アルコール依存症
アルコール依存症の方にもしびれの症状が多くみられます。お酒に含まれるアルコールは肝臓で分解されて強毒性のアセトアルデヒドに代謝されますが、このアセトアルデヒドとアルコールが血液中を循環して神経細胞を傷つけることでしびれが起こります。また、アルコールの代謝に大量のビタミンB1が消費され、ビタミンB1欠乏症=脚気の症状が現れて手足のしびれを引き起こします。
しびれの症状を自覚したとき、まず受診を考えるべきは整形外科ですが、しびれ以外の症状がある場合は慎重な判断を要します。しびれと同時に視覚や言語の異常、頭痛、吐き気、からだの半身に症状があるなど、脳の病気が疑われる場合は迷わず救急外来を受診してください。
しびれは脊椎や腱に起こる傷害や炎症だけでなく、悪い姿勢を長く続けるなど血行不良や筋肉のこりなどで起こる場合もあります。このような状態が長く続くことで脊椎や神経の病気へと進行してしまう恐れがあるため、なるべく早い段階で整形外科を受診することをおすすめします。
骨粗鬆症(骨粗しょう症)とは、骨の量(骨量)が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気です。
日本には約1000万人以上が骨粗鬆症であるといわれており、近年の高齢化に伴ってその数は増加傾向にあります。
骨粗鬆症(骨粗しょう症)になる原因は、骨は同じように見えても、新たに作られること(骨形成)と溶かして壊されること(骨吸収)を繰り返しています。骨粗鬆症は、このバランスが崩れることでおこり、骨がスカスカになりおきます。
骨折を予防するべく骨粗鬆症の発見・治療が大切です。
骨粗鬆症は予防が何よりも大切です。
圧倒的に女性、特に閉経後の女性に多くみられ、女性ホルモンの減少や老化と関わりが深いと考えられていますので整形外科医の定期的な検診をお勧めします。
内服薬や注射(カルシトニン製剤、副腎皮質ホルモン薬、ビスホスホネート製剤)などによる治療を行います。
骨折の場合、それに応じた治療が必要です。
ガングリオンとは米粒程の大きさからピンポン玉程度のゼリー状の腫瘤のことを指します。硬度も軟らかいものや硬いものまでと様々です。
ほとんどのガングリオンは手の甲側に発症します。これは手関節にある関節包に繋がっています。
手の甲以外で発症しやすい部位としては拳側の親指にある関節包やばね指が発症する拳側の指の付け根にある腱鞘が挙げられます。
神経を圧迫してしまいそれに伴ったしびれや痛み、運動麻痺等を引き起こす場合があります。また、手を酷使してしまうと腫瘤が肥大化することがあります。
ガングリオンは10代~20代の比較的若い女性によく見受けられますが、手をよく使うからといって必ず発症するという訳ではありません。
関節や腱鞘などの潤滑油として役割を果たしている滑液がガングリオン内に溜まり、それが濃縮されるとゼリー状の液体になります。
腫瘤が確認され、注射針を刺した際にゼリー状の液体が確認された場合診断されます。
外部から触れられ無いほどの小さなガングリオンなどは、確認されにくい為、MRIや超音波検査を用いて診断します。
手関節で継続した痛みが起こる不顕性のガングリオンの一種、オカルトガングリオンもそのうちの一つとされています。
腫瘤以外の症状が見受けられ無い場合はそのままにしていても問題ありません。しかし、診断を受けるには整形外科で受診する必要があリます。治療が必要になる症状としては、肥大化、より強い痛みが伴うもの、神経圧迫による神経症状があるものなどが挙げられます。
治療には保存療法が用いられ、注射器で吸引し溜まった内容物を取り除きます。吸引、排出を繰り返していくうちに治ることがあります。その他の治療法としてはガングリオンに力を加え圧迫し、そのまま潰してしまう、といった治療法も用いられます。
保存療法で改善され無い場合は手術を行いますが、それでも再発してしまう可能性があります。再発を止めるには前述した茎を含めたガングリオンそのものを取り除く必要があり、同時に、関節包周辺にあるガングリオンの元となる嚢胞の存在を確認しなければなりません。
手術後に、創部に膿が溜まってしまい、熱を発したり痛みを引き起こす場合があります。時間が経過すると手術によってできた創部は赤くなり、症状が進むと傷口が開き膿が生じます。
創部に細菌が入り、繁殖することで発症します。創部に金属インプラント等が埋め込まれている場合、発症しやすく治りにくいとされています。 ただし、細菌は皮膚組織内にも存在し、空中に浮遊している粒子にも含まれています。その為、手術を行った箇所にも細菌が存在していることが考えられます。
術後に熱が引かない場合、血液検査を行いCRPや白血球数の数値と創部の診察などにより診断されます。
手術室では空中に浮いている粒子等を最小限にするよう空調で対策されており、手術を始める際には部位への消毒をしっかり施してから行われます。
手術機器や患者に埋め込まれるインプラント等は様々な方法で滅菌処理され提供されます。それでも、皮膚組織内や空気中に浮いている細菌を完全に取り除くことは出来ないので対策として術前後に抗生物質が処方されます。
上記のような対策を施しても術後感染は一定の割合で起きてしまう併発症です。感染症を引き起こした場合、創部から膿を出したり、インプラントそのものを撤去するという対応が主な治療になります。また、糖尿病や透析患者様での感染率は高くなるとされています。
変形性関節症とは、関節の軟骨が徐々に擦り減り、関節の痛みや腫れ、変形を引き起こす病気です。関節の表面を覆う関節軟骨は、軟骨細胞と関節外のⅡ型コラーゲンとプロテオグリカンが主成分です。関節軟骨には血行や神経線維の分布はありません。
関節症では機械的刺激などにより軟骨の変性・磨耗を生じ、また関節周囲を取り囲む滑膜の炎症が併発して変性が加速します。
同時に関節周囲の骨軟骨形成などの増殖性変化を伴うこともあります。
それらの変化により血管増生や神経線維の増生をともなう関節包の線維化が起こり痛みが感じやすくなります。
肺血栓塞栓症とは、血栓(血の塊)が肺の血管に詰まってしまう病気で、最悪の場合死に至ってしまう程の合併症で術後や入院安静中に呼吸困難や胸部痛などの症状から始まります。
その他にも長時間のフライトや自家用車での避難中に引き起こした、という報告もあります。別名「エコノミークラス症候群」とも呼ばれています。
造影CT、肺動脈造影、シンチグラム等を用いて肺血栓塞栓症の診断を行います。
深部静脈血栓症では超音波検査、造影CT、静脈造影などで検査を行い、診断されます。術後に上記の検査を毎日実施することはできないので、予防での対策が必要となります。
早い時期でのウォーキングが最大の予防になります。入院安静中では自分で足首を動かしたり、弾性ストッキング、空気圧迫装置などを用いることで予防効果を得られます。
血栓症を引き起こしやすいといわれている膝や股関節の人工関節などでは、「抗凝固薬」が手術後に用いられる場合があります。「抗凝固薬」は出血等の副作用が見受けられますが、血栓症を未然に防ぐ方法は今の所ない為、予防に使われています。
骨、軟骨、内臓を除いた筋肉、脂肪、血管といった柔らかい組織から発生した腫瘍の総称であり、比較的手足に発生する場合が多く、良性が70%, 悪性が30%と圧倒的に良性が多いようです。
非腫瘍性の腫瘤として、ガングリオン、類表皮嚢胞(粉瘤)、滑液包炎がよく見受けられ、腫瘍性の腫瘤は脂肪腫、血管腫などが見受けられますがどちらも良性の疾患となっています。
臨床所見、CT検査やMRI検査などの画像所見、組織所見の3所見をあわせて診断を行います。
脂肪系腫瘍ではCT検査やMRI検査を行います。脂肪抑制の造影MRI検査で、染まれば高分化脂肪肉腫が考えられます。MRI検査ではガングリオン、粘液性腫瘍、類表皮嚢胞などは比較的容易に解ります。定型的な画像でない腫瘍には粘液性悪性腫瘍(粘液性脂肪肉腫、粘液性線維肉腫など)が多く見られます。
エコー検査だけでは、軟部腫瘍の有無はわかりますが、どのような種類の軟部腫瘍かまではわかりません。そのため、軟部腫瘍の画像診断ではMRI検査が有効的です。
採取した部分が壊死のこともあり、診断がはっきりしなければ、手術で腫瘍を露出して1×1×1cmほどの組織を採取する切開生検を行います。
良性の境界明瞭な皮下腫瘍であっても、手術室で止血帯を用いて、神経を損傷しないよう行っています。切除に時間がかかる大きな腫瘍の場合は入院して治療を行います。
悪性の腫瘍は、全身麻酔や腰椎麻酔をかけ、腫瘍の辺縁より3cm以上離して筋肉や神経・血管を含めて、ときに腫瘍が接している骨や関節も切除します。そのままにしておくと術後筋力低下、神経障害、血管障害が出現します。
欠損部を補うため骨移植、人工関節置換術、神経移植,血管移植、筋・皮弁移植などの組織移植が行われます。
悪性度の高い腫瘍は術前に抗腫瘍剤を投与して、腫瘍を小さくしてから手術を行います。
また、術前に抗腫瘍剤(抗がん剤)が有効であれば術後も追加を行います。この抗がん剤治療を行うことで結果は大きく変わってきています。
来院時にすでに肺転移がみられる場合は腫瘍および肺転移がほとんど消失するまで化学療法を繰り返してから、広範切除を行います。
患者様の希望で、可動性のある腫瘍や隆起性の腫瘍は誤って切除されてしまい後で問題になることがあります。病理診断で、紡錘形腫瘍などの結果がでた場合はすぐに専門家に紹介してもらわなければなりません。
切除後に悪性が疑われた場合は決して再発するまで待ってはいけません。初回の手術創の周りを大きく切除する追加切除が必要になります。症例によっては追加切除の前に化学療法や放射線療法も必要になります。再発を待たず治療すれば術後の結果に大きな差はないとされています。
スポーツ外傷とはスポーツ中に、急激な負荷が加わることによって起きてしまうケガのことをいいます。
一方でスポーツ障害とは、別名使い過ぎ症候群とも呼ばれ、スポーツ中に特定の部位のみ酷使されことによって起きてしまう障害です。
応急処置を適切に行うと、内出血や腫れ、痛みを抑え回復を助ける効果があり、スポーツ復帰が早くなりますので、ぜひ覚えておきましょう。
スポーツなどの競技中にケガ人が出てしまった際、病院や診療所に運ばれるまでの間、怪我による症状を最小限に留める為に「応急処置(RICE 処置)」を行います。この「応急処置(RICE 処置)」は早期に怪我から復帰する為には欠かせないものとなります。
しかし、正しい処置ができいなかったり、何もしなかった場合は復帰するのに必要以上に時間がかかってしまいます。
また、意識不明、ショック、頭部や脊椎・首などの外傷による大量出血、脱臼・骨折等のいわゆる重症を負ってしまっている場合は無闇に動かしたりせず、迅速に救急車や医療関係者を呼ぶようにしましょう。
RICE処置とは外傷を受けた際に行う緊急処置であり、外傷による出血や腫脹、疼痛などの症状を防ぐ為に患部を安静にさせる(Rest)、腫れを抑える為に冷却する(Icing)、包帯やテーピングで圧迫する(Compression)、患肢を持ち上げる(Elevation)、の基本的な外傷緊急処置の頭文字から取ったものです。
捻挫、肉離れ、打撲などの外傷で効果的です。
■Rest(安静)
外傷を受けた部位の腫脹(はれ)、血管・神経の損傷を防ぐことを目的とした処置です。
副木とテーピングにて損傷部位を固定し、安定させます。
■Ice(冷却)
二次性疾患である低酸素障害によって引き起こされる細胞壊死と腫脹を抑えることを目的としています。
具体的な処置としてはまず、氷を入れたビニール袋やアイスバッグを患部に当て冷やします。15~20分程、もしくは冷却していた患部の感覚がなくなったら一旦外します、また痛みが出てきたら冷やす、という動作を1~3日間程繰り返します。
■Compression(圧迫)
内出血や腫脹を防ぐことを目的とした処置になります。腫脹上がる箇所にスポンジやテーピングパッドをあて、テーピングや包帯などで圧迫し過ぎない程度に固定します。
■Elevation(挙上)
この処置は患部の腫れの軽減、および腫れを防ぐことが目的です。
具体的な処置とてしては心臓よりも高い位置に損傷部位を挙げます。
良性骨腫瘍とは、転移などを生じて生命に悪影響を及ぼすことがない、骨に発生した腫瘍の総称です。
骨軟骨腫、内軟骨腫などその種類は20種類以上あります。
膝や股関節周囲、手の骨に発生することが多く、運動や歩行時の痛みで気づいたり、骨の隆起や、骨折の際に発見されることもあります。
関節リウマチは、関節に痛みや腫れなどの炎症がおきる病気です。その炎症が続くことにより、徐々に骨や軟骨が破壊され、関節が変形していきます。症状や進行には個人差がありますが、診断後には早期に治療することが重要になります。 関節リウマチの患者さまは国内に約80万人いるともいわれ、特に30~50代の女性に多いという特徴があります。
良性骨腫瘍には多くの種類があり、特に治療を必要としないものから早期に治療が必要なものまで様々です。腫瘍の大きさや場所、種類によって経過観察でいいものや、切除や掻爬術が必要なものがあります。
疲労骨折は、長時間の運動後、または激しい運動後に痛みの症状があらわれ、運動をやめて休むと痛みが和らぐのが特徴的な症状です。一度の外傷で起こる骨折ではなく、同じ部位に小さな力が少しずつ加わる長時間の運動、激しい運動を繰り返すことなどで引き起こされる骨折です。あらゆる年齢で起こり得ますが、特に成長期である6歳~15歳頃の年齢でも多くみられます。
疲労骨折の原因には、身体の筋力や柔軟性不足、身体の状態が不十分のままに長時間または強度な負荷をかけることや、女性の場合には無月経や骨粗しょう症などが考えられます。また、足の疲労骨折の場合には、凹足(おうそく)(足の甲が高い状態)などもあげられます。環境要因としてはトレーニング内容、クッション性の低いシューズ、地面の硬さ、柔らかさなども関係してきます。
まずは問診や診察で症状や患部の観察・評価、運動や生活状況などを詳しく聞き取りします。明らかな外傷がなく、痛みが続いている場合には疲労骨折を疑い、X線(レントゲン)検査をおこないます。しかし、早期の骨折段階では、骨折線がうつらず、画像は正常な場合も少なくありません。さらに詳しく調べるためには、超音波(エコー)検査、CTやMRI検査、骨シンチグラフィー(骨の組織に集まる性質のある放射性医薬品を注射して撮影する画像検査)などをおこなうこともあります。
疲労骨折の治療は骨折の状態によって、保存療法か手術が必要なケースかにわかれます。
保存治療の場合には、運動やトレーニングは避け、骨に負荷がかかる活動の制限をして安静にすることでほとんどが治ります。保存治療として、超音波による骨折治療法も導入しているところもあります。そして、定期的にレントゲンなどの画像検査などで評価をおこない、段階的にスポーツ競技に復帰することができます。
しかし、完全に骨折してしまった場合、時にはギプス固定や手術が必要です。手術では、髄内釘(ずいないてい)といわれる骨を支えるスクリューを入れる治療などがあります。
また、無月経や骨粗しょう症が原因の疲労骨折の場合には、治療薬の処方なども並行しておこなわれます。治療期間は骨折の程度や部位によって差がありますが、スポーツ競技の復帰までは通常2~3か月を要します。
悪性骨腫瘍とは、骨に発生する悪性(がん)の腫瘍のことで、悪性骨腫瘍には、10歳代に発症しやすい骨肉腫に代表される原発性骨腫瘍と、肺癌や乳癌の骨への転移に代表される転移性骨腫瘍がありますが、悪性骨腫瘍全体では転移性骨腫瘍が大半を占めます。
特有な症状はありませんが、けがをしないのに痛みや腫れが出現し、長く続いたりすることが多いようです。骨がもろくなり、骨折して発見されることもあります。
原発性骨腫瘍は膝や股関節、肩などの近くに生じることが多いのですが、転移性骨腫瘍は脊椎にも高い頻度でみられます。
原発性悪性骨腫瘍の多くは、未だ原因がはっきりと解明されていません。
転移性骨腫瘍は、原発性の悪性細胞が主として血液やリンパの流れを介して骨(骨髄)に運ばれること(転移)によって起こります。
診断には、問診を行ったのち、肉腫の診断のためには血液検査の他に、レントゲン、CT、MRI、骨シンチグラフィー、PETなどの画像検査などを行います。
悪性度の高い腫瘍では、まず化学療法(抗癌剤による治療)を行います。次に、手術が可能であれば腫瘍を切除します。手術で切除したところを元に戻すためには、人工関節を入れたり、他の場所から骨(人工骨を含む)を移植する方法などがとられます。場合によっては、四肢を切断することもあります。手術のあとは、化学療法を再び行います。化学療法を行わず、手術のみを行うこともあります。