自動車事故やスポーツ時の転倒により首(頚椎)に強い力が加わることで受傷し、首や全身に痛みやしびれなど様々な症状が起こる状態のことをいいます。ここではむち打ち症の症状や原因、治療法などについて詳しく解説していきます。
むち打ち症という用語は医学用語ではなく、頸(くび)に衝撃を受けたことによって様々な症状を発生している状態のことを表す俗称です。一口にむち打ち症と言っても、損傷を受けた部位によって主に4つの型に分類されています。
1. 頸椎捻挫型(けいついねんざがた)
最も多いケースで、頭を支える頸椎周辺の靭帯や筋肉を損傷している。
症状:頭痛、首や肩の痛み、首の動かしにくさ(左右前後に動かせない)
2. 神経根損傷型(しんけいこんそんしょうがた)
頸椎から腕へと伸びる神経の根元を損傷している。
症状:首の痛み、肩から腕にかけてのしびれや痛み、感覚障害、力が入らない(脱力)
3. 脊髄症状型(せきずいしょうじょうがた)
脊髄やそこから伸びている神経まで損傷が及んでいる。
症状:腕や脚の痛みやしびれ
4. バレー・リュー症候群型
自律神経まで損傷している。
症状:頭痛、めまい、ふらつき、耳鳴り、倦怠感など
それぞれ典型的な症状があり、受傷直後ではなく受傷から数時間後や翌日以降に遅れて現れることが多くみられます。
2~3ヵ月以内に良くなっていくと言われていますが、数ヵ月、数年と症状が残る場合もあります。
主な原因として自動車での追突事故が挙げられます。
自動車乗車中に衝突すると胴体部分はシートベルトにより座席に固定されているため、首から上だけが大きく揺さぶられます。事故の衝撃で頸部に強い力が加わり、首がむちのようにしなることで首周辺の組織に損傷してしまいます。
そのほかにも、コンタクトスポーツによる衝突や、スノーボードなどの高速滑走時の転倒で頭を強く打った場合にも起こります。
診察および各種検査を用いて損傷部の状態を調べます。レントゲンやMRI、CTなど損傷部を可視化する画像診断による検査が重要になります。
レントゲン
X線を使用した検査です。骨が損傷を受け、骨折や脱臼がある恐れのある場合に用います。
MRI
磁石と電波を使用し、X線では観察できない靭帯や神経などの柔らかい組織の異常を見つける検査です。手のしびれなどの神経症状や、症状が長引いている場合に用います。
CT
X線を使用し、レントゲンよりも小さな骨折や脱臼を立体的に観察することができます。特に、大きな衝撃を受けた事故の際に脊髄や脳などの深層部に損傷がないか確かめるために用いる場合があります。
基本的には自然経過で回復しますが、自己判断で病院へ行かずに放置すると、後遺症が残ったり症状が長引く原因になるため、きちんと病院で適切な治療を受け、リハビリテーションを行うことをおすすめします。
急性期には筋肉や靭帯に強い炎症が起き、患部を動かしづらくなることがあります。この場合は無理に動かさず、頸椎カラーで固定し、内服治療や湿布で炎症を抑えて安静を心がけることが大切です。急性期の痛みが軽減した後は低下した運動機能を元に戻すためにリハビリテーションを行います。
むち打ち症に関する質問についてお答えします。
原因やけがの範囲にもよりますが、軽いむち打ち症なら1週間程度で治る場合もあります。多くは1ヶ月以内に治癒しますが、ひどい場合2~3ヶ月痛みが取れないこともあり、痛みが取れたあとも半年以上めまいやしびれなどの症状が続くこともあります。
受傷してから数時間後〜翌日にかけて、または数日経過してから症状があらわれることが多いといわれています。受傷直後は興奮状態で痛みを感じにくいですが、時間の経過で徐々に不調や痛みがあらわれ、むち打ち症と診断される場合もあります。
むち打ち症は、筋肉や靭帯の損傷によって首や肩の痛みや動かしにくい症状のほか、首の神経を損傷しているとめまいや吐き気、しびれ、耳鳴りや脱力感といった神経症状が起こる場合もあります。
むち打ち症の治療法とは?
自然経過で治癒します。急性期の数日間はや湿布や内服で炎症を抑え、頸椎カラーを使用します。急性期の疼痛が軽快した後は痛みを考慮しながら頸椎のリハビリテーションを行います。
症状を長引かせないために
長期間頸椎カラーを使用すると、筋委縮や拘縮の原因になり社会復帰が遅れる場合があるため控えましょう。