膝関節の仕組みを知ろう

膝関節は大腿骨と脛骨、膝蓋骨からできていて、脛骨の関節部分の平らなところを大腿骨の丸い先端が転がるようにして動きます。
この大腿骨と脛骨を四つの靭帯と半月板が繋いでいます。関節の内側は滑らかな軟骨で覆われており、間には半月板と呼ばれる組織が存在しています。 さらに関節部分は関節包で包まれており、その内側の滑膜から関節液が分泌され、潤滑機能を果たしています。こういった軟骨・半月板(クッションの役割)と関節液(潤滑油の役割)によって、膝がスムーズに動く仕組みです。正座のときは150度前後、しゃがむときは120度程度、歩くときは60度前後で関節が曲がるようになっています。これらのうちどれかが損傷すると歩行時に痛みが走ったり、曲げ伸ばしが困難になる症状が出てきてしまいます。

膝関節の痛みの原因となる病気

膝関節の痛みの原因はさまざまですが、肉体労働やスポーツで、適切なケアをせずに太ももやふくらはぎの筋肉を酷使してきた人に多く現れます。疲労の積み重なりにより、膝の動きや膝関節の安定性に関わる人体や半月板、軟骨などの構造に大きな問題が生じる場合があります。また、普段何気なくしている姿勢も、膝に大きな負担を与えています。 片方の足だけに重心をかけてしまう場合や、赤ちゃんを抱っこする際に腰に乗せる体勢など、知らない間に膝に負担を与え、膝関節の痛みを引き起こすのです。

膝関節の痛みをともなう病気は、次のようなものがあります。

変形性膝関節症の症状

変形性膝関節炎は膝関節の軟骨がすり減り、痛みや腫れ、関節炎や膝関節の変形をともなう病気です。1:4の割合で女性に発症することが多く、高齢の女性に多く見られます。
原因は加齢や遺伝、日常生活での膝の酷使、肥満などが挙げられます。女性に多いのは筋力不足による膝関節の酷使や閉経後の骨粗鬆症が関わっていると考えられています。

初期段階では、歩き始めや動き始めに膝に痛みを感じるのが特徴です。進行すると膝に腫れや水が溜まるほか、可動域が狭まり、重症化すると激痛により日常生活に支障を起こすこともあります。
骨がとがった状態になる骨の変形が起こります。就寝時や安静時には痛みがないのが特徴なので、動いているときだけ痛みを感じる場合は、変形性膝関節炎を疑った方がよいでしょう。

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関節リウマチの症状

膝関節痛で最も恐れなければいけないのが、関節リウマチです。関節リウマチは自分の免疫細胞が自分自身を攻撃し、細胞を破壊する代表的な膠原病の1種で、炎症性自己免疫疾患と呼ばれています。
なんらかの原因で突然免疫細胞が関節に攻撃をはじめ、関節痛や関節の変形が起こりますが、詳しい原因や治療法はいまだ確立されていません。
関節リウマチは、変形性膝関節症と同様に1:4の割合で女性に多く見られ、30代から50代の比較的若い時期から発症します。初期症状は朝のこわばりがあり、1時間以上こわばりが続く場合は関節リウマチを疑った方がよいでしょう。
最初は指先の関節痛からはじまり、だんだん膝や肘など大きな関節が痛むようになります。体の数か所で痛みがあったり、痛みが移動する場合は注意が必要です。診断は問診のほか、血液検査と画像検査によっておこなわれます。

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半月板損傷の症状

スポーツなどで強く打ったり、ねじったりしたときに膝に強い痛みを感じ、続くようなら、半月板の損傷が疑われます。
痛みの特徴として、膝が引っかかったような痛みや、膝に力が入らない、曲げ伸ばしができない、膝関節が腫れて膨らんでいるといった症状が見られます。特に膝に体重を乗せたときや、曲げ伸ばしをしたときに痛む場合は注意しましょう。
半月板は一度損傷すると元に戻ることはないため、完全に元通りにすることはできません。症状が軽い場合は安静にして患部を保護しますが、膝が伸ばせないなどの破損がひどい場合は手術対応となります。

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靭帯損傷の症状

靭帯の場合は膝ががくがくとして落ち着かない、不安定な感じが特徴で、少し傷んだ程度なら一時的な痛みで治まりますが、酷いと動けなくなることもあります。治療方法は、 症状に応じて保存療法か手術かを選択します。
スポーツ後の負傷が原因となる膝関節痛は、靭帯か半月板の損傷、あるいは両方の可能性が高くなります。

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膝関節に痛みを感じたときの対処法

膝関節の痛みや違和感を感じたら、まずは安静にすることが第一です。無理な運動は控え、初期段階のうちに正しい処置をおこないましょう。
そのためにも膝の痛みや症状を確認したうえで、病院で検査を受けることが大切です。

膝のどの場所に痛みがあるかチェック

まずは自分の膝のどの場所に痛みがあるかチェックしてみましょう。膝に痛みがある場合、考えられるのは変形性膝関節症と関節リウマチです。

変形性膝関節症は膝関節の形や骨に異常が起こり、膝関節が徐々に変形していく病気です。 初期の症状は、立ち上がりや歩き始めなどの動作の開始時に痛みが生じ、休むと次第に楽になります。しかし軟骨のすり減りが進行して中期の症状になると、正座や階段の昇降時に膝関節が痛むようになり、日常生活に支障がでてきます。

関節リウマチの場合は、初期症状が出ない場合もあり、より注意が必要です。 しかし変形性膝関節症と異なり、症状は膝以外にも現れるのが特徴です。代表的な症状は、膝に水が溜まるほか、手首や足首の腫れ・しびれ、全身の倦怠感などが挙げられます。痛みが移動したり、2箇所以上に痛みを感じる場合は関節リウマチを疑ってみましょう。

整形外科を受診する

膝関節に痛みを感じたら、まずは病院で検査を受けましょう。膝関節の痛みは整形外科が専門になります。

変形性膝関節症の診断は、問診や触診によっておこないます。膝の内側の圧迫痛の有無や関節の動く範囲、腫れやO脚変形の有無を調べ、最終的な判断はレントゲンやMRI検査でおこないます。 症状が軽い場合は痛み止めの薬や湿布で痛みを和らげ、膝関節内のすべりをよくするヒアルロン酸の注射などをします。

関節リウマチの検査は、主に血液検査とエックス線検査によっておこなわれます。関節リウマチは進行性の病気であり、進行すると全身の関節が変形と破壊を繰り返す恐ろしい病気です。こちらは進行を防ぐ薬を処方してもらうことで、完治はしませんが、症状を和らげ悪化を食い止めることが可能です。

膝関節痛の治療方法

膝関節痛の治療は、整形外科でおこなわれます。治療法は主に「保存療法」「手術療法」「再生医療」の3つがあり、痛みの度合いや疾患の進行度などによって、綿密な治療計画が立てられます。

保存療法は、症状が比較的軽い段階でおこなわれる治療法です。運動訓練による適度な全身運動を取り入れ改善を図ったり、外用薬や内服薬、注射薬で炎症を抑えたり、痛みを和らげたりします。

手術療法は、症状が重症化した場合に適応となります。人工関節を使ったり、外科的に膝の変形を矯正したりする治療法です。

再生医療は、保存療法と手術療法の間に位置する治療法です。ご自身の血液から細胞を採取して膝関節に注入し、自然治癒力を高められます。主に変形性膝関節症に用いられます。

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膝関節痛を予防するためには

膝関節痛は、日々の膝の負担が積み重なって引き起こるケースが多々あります。日常生活にちょっとした習慣を加えることで、膝関節の痛みの予防につながります。

適度な運動を心掛ける

膝関節痛の予防のためにも、ウォーキングや軽いランニングなど、適度な運動を心がけることが大切です。治療として運動療法という言葉があるとおり、痛みで硬くなった筋肉をほぐすと、痛みの軽減や血行改善が期待できます。日頃から運動習慣を取り入れることで、膝関節の痛みを予防できます。

ただし、膝の痛みがすでにでている方や、変形性膝関節症と診断された方は、ランニングで痛みが悪化してしまうこともあるため控えた方がよいでしょう。

膝のストレッチをおこなう

運動とともに取り入れたいのがストレッチです。痛みを軽減し、関節を柔らかくしてくれる効果が期待できます。特にお風呂のあと、身体が温まっている状態でストレッチするのがおすすめです。
また、ウォーキングやランニング前後の準備体操として取り入れるのもよいでしょう。

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