グルカゴンの投与により成長ホルモンの分泌が促されるからです


成長ホルモン治療の前に、成長ホルモン負荷試験が行われます。
その際に投与される薬剤の一つがグルカゴンですが、グルカゴンには血糖値を上げる作用があるといわれています。

グルカゴンの投与によりインスリンが働き、血糖値を急激に下げるため、成長ホルモンが分泌されると考えられています。
これらの試験で成長ホルモンの分泌が不十分という結果が出た場合、成長ホルモン治療を受けることができます。

グルカゴンには成長ホルモンを分泌させる作用があります

成長ホルモン治療を受ける前に、成長ホルモンの分泌状態をより詳しく調べるための「成長ホルモン負荷試験」を受ける必要があります。この試験ではさまざまな薬剤が用いられていますが、その中の一つにグルカゴンと呼ばれる薬剤があります。

下垂体に成長ホルモンの量が充分にあれば、その試験により成長ホルモンが大量に分泌されると考えられています。
反対に、成長ホルモンの量が不足している場合、薬剤の投与を行っても成長ホルモンが充分に分泌されないと考えられます。

この試験で得られる結果は1度では信憑性にかけるため、一定の時間(30分間隔)ごとに行われ、その都度血液中の成長ホルモンの量を測定する方法がとられています。
グルカゴンが成長ホルモン負荷試験に使用される理由は、平たく言えば「成長ホルモンの分泌を促す作用があるから」といえます。

グルカゴンには血糖値を上げる働きがあるといわれており、グルカゴンを投与することにより、血糖値を下げるためにインスリンが分泌されます。
インスリンが分泌されると急激に血糖値の降下が起きます。

この時に、しっかりと脳に「低血糖」の状態であることを伝え、成長ホルモンの分泌を促すことができているのかを調べるのが、この試験の目的です。
試験の結果、成長ホルモンの分泌に異常がある場合に成長ホルモン治療が受けることが可能になります

成長ホルモンで使用される主な薬剤は5種類あります


成長ホルモン負荷試験では、グルカゴンを含めた二種類以上の薬剤を用いた試験を行う必要があります。ここでは、成長ホルモン負荷試験で用いられる薬剤の種類をご紹介していきます。

インスリン

先にも少し触れたインスリンです。インスリンは膵臓から分泌され、血糖値を下げる作用があるといいます。
低血糖になると成長ホルモンの分泌が促進されるため、インスリンが用いられることがあります。

アルギニン

アミノ酸の一種であるアルギニンには、成長ホルモンの分泌を促す作用があるといわれています。
水溶性の性質を持っているため、通常は点滴投与されます。

クロニジン

クロニジンはもともと高血圧を治療する薬剤ですが、脳を刺激し成長ホルモンの分泌を促進する働きをもっていると考えられます。

L-DOPA

L-DOPAはもともとパーキンソン病を治療する薬剤です。脳の中でドーパミンと呼ばれる物質に変化し、視床下部に働きかけることで成長ホルモンの分泌を促すと考えられています。
なお、これらの負荷試験は通常30分間隔で採血が行われ、120分間継続されます。グルカゴンに関しては180分間となります。

成長ホルモン治療の対象となるかどうかは試験の結果次第です

成長ホルモン負荷試験の検査結果により、実際に成長ホルモン治療が受けられるか否かが決定するといっても過言ではありません。
では、どのような検査結果の場合に、成長ホルモン治療を受けることが可能になるのでしょうか。

まず、検査結果により「成長ホルモンの分泌量が正常値である」ということが判明した場合、成長ホルモン治療を受けることは原則できません。
成長ホルモンの分泌量の正常値というのは、10ng/ml以上と考えられています。

次に、二つ以上の薬剤投与により、どちらか片方だけに異常が見られた場合は、すぐに成長ホルモン治療を開始することはできません。
この場合、医師により経過観察となるか、もしくは別の薬剤による追加試験が行われます。

成長ホルモンの分泌量が正常値と異常値のちょうど真ん中(5~10ng/ml)に該当する場合も、治療の対象になるでしょう。
そして、成長ホルモンの分泌量が異常値である5ng/ml以下である場合は、もちろん治療の対象となります。

(まとめ)成長ホルモン負荷試験でグルカゴンを用いるのはなぜ?

1.グルカゴンの投与により成長ホルモンの分泌が促されるからです

グルカゴンは成長ホルモン負荷試験で用いられる薬剤の一つです。通常、グルカゴンの投与で血糖値が上昇し、インスリンによりその値が急降下、成長ホルモンが分泌されるといいます。
成長ホルモンの分泌に異常がある場合は、正常に分泌されない結果が出ます。

2.グルカゴンには成長ホルモンを分泌させる作用があります

成長ホルモン負荷試験でグルカゴンが用いられているのは、成長ホルモン分泌を促す働きがある薬剤だからです。グルカゴンには血糖値を上げる作用があり、それによりインスリンの分泌が促進され、結果的に成長ホルモンが分泌されると考えられています。

3.成長ホルモンで使用される主な薬剤は5種類あります

成長ホルモン負荷試験で用いられる薬剤は、グルカゴンを含めて5種類挙げられます。血糖値を下げるインスリン、アミノ酸の一種であるアルギニン、高血圧の治療薬であるクロニジン、パーキンソン病の治療薬であるL-DOPAといった種類があります。

4.成長ホルモン治療の対象となるかどうかは試験の結果次第です

成長ホルモン治療が受けられるかどうかは試験の結果によります。成長ホルモン治療の対象となるのは、成長ホルモン負荷試験で異常値が出た場合、もしくは正常値と異常値の真ん中にあたる場合のみとなります。

監修医情報

西新宿整形外科クリニック院長
沼倉 裕堅 医師
ぬまくら ひろかた/Hirokata Numakura
経歴
東北大学医学部医学科 卒
湘南藤沢徳洲会病院 内科・救急科・整形外科
いわき市医療センター 整形外科
竹田綜合病院 整形外科
山形市立病院済生館 整形外科
Mahidol Univ. Ramathibodi hospital 整形外科(タイ)
いしがみ整形外科クリニック
西新宿整形外科クリニック

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院長 沼倉 裕堅 医師