子どもの成長曲線が明らかに異常な場合

子どもの成長曲線が明らかに異常を示していれば、何らかの疾患が隠れている可能性があります。専門の低身長外来を受診すると、詳しい問診のほか、体のバランスや顔貌、肥満など外見的な特徴も確認します。外見に各疾患の症候が現れている場合があるからです。また、表1にあるような検査も行われます。一般的な血液検査や尿検査のほかに、医師がさまざまな病気の可能性を考えて検査を行います。

表1 低身長で受診したときに、よく行われる検査

・甲状腺刺激ホルモン、甲状腺ホルモン、性腺刺激ホルモン、インスリン様成長因子-1(IGF-1)などを調べる検査
・染色体検査
・成長ホルモン分泌刺激試験
・頭部画像検査(CT、MRI) など

成長ホルモン分泌不全性低身長症

子どもの低身長でなんらかの病気が隠れている場合、いちばん多いのが成長ホルモンの分泌不全によるもので、これを成長ホルモン分泌不全性低身長症といいます。原因は多岐にわたり、骨盤位(さかご)分娩、新生児仮死、新生児黄疸などの周産期のトラブルや、脳腫瘍などによって脳の下垂体が障害されて、成長ホルモンの分泌が不足すると考えられています。ただし、こうした原因が特定できるのは患者全体の約10%で、大半は原因が不明です。

治療は、成長ホルモンを注射する成長ホルモン補充療法が行われます。成長ホルモンはたんぱく質の一種なので、口から飲んでも胃や腸で消化されてしまいます。このため、治療には注射薬が使われています。この注射は保護者か本人が家庭で打つもので、注射の打ち方について医療機関で指導してもらう必要があります。

ターナー症候群

ターナー症候群は、女性のみ発症する染色体異常の病気です。ヒトの場合、染色体は1つの細胞に46本あり、そのうち2本が性別を決定づける性染色体です。性染色体にはXとYの2種類があり、男性はXとYを1本ずつ、女性はXを2本もっています。ターナー症候群の女性は、X染色体の1本がすべて欠けているか、部分的に欠けています。母体の中で受精卵として発生をとげていく段階で、染色体の分裂や合成に異常が生じることで起こると考えられています。

ターナー症候群の代表的な症状が低身長なので、低身長を理由に医療機関を訪れた女性患者には医師は、この病気を念頭に置いて診療します。低身長以外の症状としては、乳房の発達や月経など思春期特有の二次性徴の発現不全、手足のむくみ、幅の広い胸、耳の変形、首の皮膚が伸びて首に翼があるようにみえる翼状頸(よくじょうけい)などがあります(1)。注意欠陥・多動性障害や学習障害も、しばしばみられます。

確定診断は染色体検査で行います。染色体異常そのものを治すことはできませんが、この病気に関連して起こる症状や、大動脈狭窄症、高血圧、腎障害、糖尿病、甲状腺疾患などの合併症は治療の対象となります。低身長に対しては成長ホルモン補充療法、二次性徴を促す治療としてはエストロゲン補充療法が行われます。

図1 ターナー症候群の主な症状

 

《参考文献》

田中敏章(著), 子どもの身長を伸ばす本. 講談社 2011

小児慢性特定疾病情報センター. 内分泌疾患の疾患一覧

https://www.shouman.jp/disease/search/group/list/05/%E5%86%85%E5%88%86%E6%B3%8C%E7%96%BE%E6%82%A3

監修医情報

西新宿整形外科クリニック院長
沼倉 裕堅 医師
ぬまくら ひろかた/Hirokata Numakura
経歴
東北大学医学部医学科 卒
湘南藤沢徳洲会病院 内科・救急科・整形外科
いわき市医療センター 整形外科
竹田綜合病院 整形外科
山形市立病院済生館 整形外科
Mahidol Univ. Ramathibodi hospital 整形外科(タイ)
いしがみ整形外科クリニック
西新宿整形外科クリニック

運営者情報

運営クリニック 西新宿整形外科クリニック
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院長 沼倉 裕堅 医師