膝関節の痛み・障害:部位別症状一覧

ここでは、膝関節の仕組みや痛み原因、各症状をご覧いただけます。

膝関節のしくみ

膝関節は、大腿骨(太ももの骨)や脛骨(すねの骨)、膝蓋骨(膝の皿の骨)の3つの骨で構成されています。これらの骨の表面は弾力性のある軟骨で覆われています。軟骨は膝に体重がかかったときの衝撃を緩和するクッションの働きをしており、関節が滑らかに動くようにできています。大腿骨の関節面は内側、外側ともまるくなっており、脛骨の関節面上を転がって動くことで、膝を曲げたり伸ばしたりができます。

また、膝関節にはさまざまな筋肉や靭帯、腱が付いており、ジャンプしたり走ったりしても、ぐらつかないように、安定性を保つ役割を果たしています。

膝関節の痛みはなぜ起きる?

膝は人の体重を支えている部位であり、歩くときには体重の2~3倍、階段の昇降では5倍以上もの負荷がかかるといわれています。

膝関節の痛みの原因は年代によって異なります。10代~20代は成長期によるものや、スポーツによる 外傷が主ですが、中高年の膝の痛みの主な原因は「加齢による筋力の衰え」と「体重増加」です。

加齢によって膝を支える筋力が弱まると、膝関節への負担が増えます。すると、膝関節でクッションの役割を果たしている軟骨がすり減り炎症を起こして痛みにつながります。

また、体重の増加も、膝への負担を大きくします。膝には増加した体重の3倍もの負荷がかかるといわれており、軟骨がすり減りやすくなります。その結果、関節の骨同士がぶつかりあって痛みを生じるのです。

膝関節の症状一覧

膝関節内の病気と膝関節周辺の病気を列記します

  • 変形性膝関節症

    • 症状

      初期は、立ち上がりや歩きはじめなどに膝がこわばったり、鈍い痛みを感じたりしますが、休めば自然とおさまります。進行すると正座や階段の昇降が困難になり、やがて安静時にも痛みむようになります。 膝をまっすぐに伸ばせず、歩行が困難になります。

    • 原因

      加齢により関節軟骨がすり減ったり、変形したりすることが原因です。また、筋力の低下や肥満、遺伝子などの関りもあります。骨折や半月板損傷などの外傷や化膿性関節炎などの後遺症によって発症するケースもあります。

    • 治療

      症状が軽い場合、痛み止めの内服薬や外用薬で治療します。また、ヒアルロン酸注射やリハビリテーション、膝を温める物理療法、膝装具の作成などをおこなうこともあります。改善されない場合は、高位脛骨骨切り術、人工膝関節置換術などの手術を検討します。入院期間は1ヵ月程度です。
      また、近年では、治療方法の新たな選択肢として「膝関節再生医療(PRP再生療法)」を選択される方が増えています。痛み止め・外用薬やヒアルロン酸注射といった保存療法と、外科手術のちょうど中間に位置する治療法です。
      痛みへの効果は手術と同程度で、身体への負担は保存療法と同程度であるため、保存療法で改善されない場合、手術へと進む前に検討することをお勧めしています。

  • 半月(板)損傷

    • 症状

      膝の複雑な動きを補助する半月板が損傷することで、膝関節が完全に伸びなくなり、膝の曲げ伸ばしの際に痛みや違和感を生じます。症状が強い場合は、膝に骨液が溜まったり、ロッキング(動かなくなるこ と)が起こることがあります。

    • 原因

      スポーツや交通事故による外傷のほか、体重がかかった状態で膝をひねったり、強い衝撃が加わったり、無理な動きをしたときに発生しやすくなります。加齢により半月板が摩耗して傷つきやすくなると、軽 い動作でも損傷することがあります。

    • 治療

      リハビリや抗炎症薬、鎮痛薬などの処方による保存療法で改善が見られない場合は、手術を検討します。手術は損傷した部分を縫い合わせる縫合術と、断裂した半月板を切り取る切除術があります。スポーツの復帰は、縫合術で3ヵ月、切除術で6ヵ月が目標です。

  • 膝靱帯損傷

    • 症状

      3週間ほどは強い膝の痛みや可動域が制限されます。その後、靭帯からの出血し、血液が関節内に溜まると腫れが目立つようになります。痛みや腫れ、可動域の制限は徐々に改善されますが、膝が不安定な状態になることがあります。

    • 原因

      大きな力が膝に加わることで損傷します。一般には脛(すね)を無理に外側に向けることで内側側副靭帯が、無理に内側に向けることで外側側副靭帯が損傷します。また、ジャンプをして着地した際のねじれなどで前十字靭帯が、脛に無理な後方への力が加わることで後十字靭帯が損傷します。

    • 治療

      内側側副靭帯損傷や後十字靭帯単独損傷の場合は、ギプス固定で経過を見ます。前十字靭帯損傷では、自家組織を用いて関節鏡を用いながらの再建術が一般的です。術後は3~6ヵ月ほどのリハビリをおこない、徐々にスポーツ復帰を目指します。

  • 膝離断性骨軟骨炎

    • 症状

      膝関節の軟骨が壊死して薄く骨をつけた状態で剥がれ落ちます。初期は運動後の違和感や軽度な痛みがあります。関節軟骨の表面に亀裂や変性が生じると痛みが強くなり、骨軟骨片が遊離すると、ひっかかり感やズレ感、ロッキングなどの症状が現れます。

    • 原因

      スポーツで膝に繰り返し負荷がかかったり、強い衝撃を受けることで、軟骨下の骨にストレスがかかることが原因とされています。関節軟骨を支える軟骨下の骨が、血流障害などで壊死すると、軟骨の一部が分離し、進行すると遊離します。

    • 治療

      成長途中の学童の場合は保存療法を選びますが、改善されない場合や骨軟骨片が遊離する場合は、整復固定術、または遊離骨軟骨片の摘出や自家骨軟骨片の移植などをおこなうことがあります。治癒までに6ヵ月~12ヵ月かかります。

  • オスグッド病

    • 症状

      初期は、膝に痛みが生じ、膝の下が腫れて熱を持つことがあります。休むと痛みが治まりますが、スポーツを再開するとまた痛みが出るのが特徴です。進行すると痛みが増し、歩行が困難になって、スポーツができない状態になります。

    • 原因

      成長期の急激な骨の成長に軟骨組織の成長が追いつけず、大腿四頭筋の柔軟性が低下することが原因です。この時期に膝を使う動作を繰り返すと、大腿四頭筋と付着している膝蓋腱が脛骨結節を引っ張り、成長軟骨部を剥離します。ジャンプやダッシュ、キックなどの動作が多い、バレーボールやバスケットボール、サッカーなどをおこなう成長期の男の子が多く発症します。

    • 治療

      スポーツを控えて安静にします。大腿四頭筋肉のストレッチや膝の前側のアイシング、痛みが強いとき は内服や湿布、物理療法を試みます。骨軟骨片の固定や、骨片を摘出する手術をおこなうこともあります。スポーツができるようになるためには、初期症状であれば1ヵ月、進行すると3ヵ月以上かかることがあります。

  • スポーツによる膝の慢性障害

    • 症状

      ランニングやジャンプを長時間繰り返しおこなうことで膝に痛みが生じます。痛みの程度によって重症度が異なります。

      軽傷:スポーツは可能だが、その後に痛む
      中等症:スポーツ時と後に痛むがプレーは可能
      重症:スポーツ中痛み、プレーに支障がある
      最重症:腱や靭帯が断裂する

    • 原因

      オーバートレーニングが主な原因です。ランニングやジャンプ運動の長時間の繰り返しや外傷、急激な動作や衝撃によって膝を傷めます。筋力や柔軟性の不足、本人の体力や技術以上の練習、地面の状態や合わない靴なども要因です。

    • 治療

      スポーツの前には、十分なストレッチングをおこなうことが大切です。スポーツ後のアイシングや外用薬も効果的です。軽症、もしくは中等症であれば、練習メニューを無理のないように改善し、休憩を取り入 れながら、スポーツを継続できます。

  • 膝蓋骨脱臼

    • 症状

      膝蓋骨(しつがいこつ:膝関節の皿)が多くは外側に脱臼し、膝の位置がずれます。脱臼時に強い痛みや腫れが生じ、歩行が困難になります。脱臼を繰り返すようになると、痛みや腫れは少なくなりますが、不安定感が強く現れます。

    • 原因

      スポーツなどでジャンプした際の着地により、大腿四頭筋が強く収縮して起こります。10代の女性に生じやすく繰り返しやすい障害です。膝蓋骨や大腿骨の形の異常や大腿四頭筋の作用する方向と膝蓋靭帯の方向が異なるなど、先天的な素因もあります。

    • 治療

      整復をした後に、膝をサポーターなどで固定します。脱臼にともない軟骨や骨が損傷した場合、素因が明らかで反復の可能性が高ければ、手術を検討します。手術を受けた場合、スポーツの再開までに3~6ヵ月は必要です。

  • 腓骨神経麻痺

    • 症状

      下腿(かたい)の外側から足の甲と小指を除いた甲の背側にかけて、痛みやしびれが生じ、感覚が鈍くなります。足が思うように動かず、つまずきやすくなります。症状が強いと足首と足指が上に反り返らなくなり、下垂足(かすいそく)になります。

    • 原因

      腓骨頭部(膝の外側)が外部から圧迫されることで生じます。下肢を牽引された状態での仰向けの姿勢が続いたり、ギプス固定をしたりする際、腓骨頭部が後ろから圧迫されることで起こります。腫瘤(しゅりゅう・こぶのこと)や膝の外傷なども原因です。

    • 治療

      原因が明らかでない場合は、圧迫を避け安静にし、内服や運動療法などをおこないます。麻痺が進行した場合や、骨折や脱臼などの外傷や腫瘤が原因の場合は手術が必要です。神経損傷があれば、神経剥離や縫合、移植などの手術をします。

  • O脚・X脚

    • 症状

      O脚は両膝が外側に曲がり、左右の内くるぶしをつけても、両膝の内側が接さない状態です。X脚は両膝が内側に曲がり両膝の内側をつけても、左右の内側のくるぶしが接しません。初期症状は外見のみですが、変形が進むと痛みが出ることがあります。

    • 原因

      生理的に乳幼児はO脚ですが、成長とともにまっすぐになります。その後、歩き方や動作、座り方の癖などの影響で変形していきます。また、大腿骨や脛骨の異常や靭帯異常、外傷など、病的な原因がある場合もあります。

    • 治療

      生理的なO脚・X脚は基本的に治療を必要としません。病的な原因で強い変形が見られる場合は、骨切り術の手術や、変形の程度によってO脚では外側、X脚では内側にStaple(固定材料)を挿入する固定術をおこなうこともあります。

  • 膝関節捻挫

    • 症状

      関節周囲が腫れたり、しゃがんだり、歩いたりするときに痛みを生じます。悪化すると膝関節周りの靭帯が伸び、膝関節が変形して屈伸運動が難しくなります。損傷の度合いに応じて痛みがあるのが一般的です。

    • 原因

      バレーボールやバスケットボール、サッカー、テニス、陸上競技などの激しいスポーツで直接膝に衝撃を受けたり、膝をひねったりして受傷することがあります。スポーツや階段の昇降、長時間の正座などで、膝に負担がかかることが原因です。

    • 治療

      一般的には、サポーターによる外固定とリハビリによる保存療法をおこないます。痛みが強く不安定性が続く場合は関節鏡による膝関節手術をおこなうことがあります。大きな靭帯損傷があっても、1~2ヵ月程度で日常生活に支障がない程度に回復します。

監修医師紹介

監修医師紹介

西新宿整形外科クリニック 川原 昭久 院長 Akihisa Kawahara

  • 【所属学会】
    日本整形外科学会
  • 【資格】
    日本専門医機講認定 整形外科専門医
  • 【学会発表実績(筆頭演者として)】
    神奈川整形災害外科研究会